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ゆっくりの飾りの話に興味をもったので書きました。 最近、面白い話を聞いた。 ゆっくりは、死んだゆっくりの飾りを身につけると他のゆっくりに殺されるらしい。 何度かゆっくりたちに家や畑を荒らされてた俺は、それを聞いてその話に興味が湧いた。 どうすればゆっくりを苦しませて殺せるか、ずっとそれを模索していたからだ。 あいつらは絶対に自分が間違ったと思わない。 仮に間違ったと言っても、それは中身を伴わない単なる命乞いだ。 こっちの怒りが少しでも収まると分かると、手のひらを返したように、 「せっかくだから、ゆるしてあげるよ!!!」 「ほんとーはれーむとまりさのおうちだけど、そこまでゆーならすんでもいーよ!!!」 と言う。もちろん、そんなことをいった奴らは踏み潰した。あいつらは反省しない、 というより反省するのに必要な記憶力も思考力もない。なら、どうやって自分たちの罪の重さを分からせるか? 答えは簡単だ。苦しませればいい。 死んだゆっくりの飾りを身につけると、他のゆっくりに殺される。自分が仲間だと思ってきた連中にいきなり攻撃され、 ショックを受けるゆっくりたちを想像すると、いてもたってもいられず森の中に入っていった。 森に住むゆっくりの飾りを手に入れるためだ。 森に入って10分ぐらい経つと、目の前にゆっくり霊夢が現れた。 ゆっくり霊夢は赤いリボンを着けている。 俺はそれを見た瞬間、「これだ!」と思った。 帽子と違って、リボンなら結びつければ外れない。 ただし今は殺さない。話によれば、死んだゆっくりの飾りを盗ったものは呪われるらしい。おお、こわいこわい。 だから、リボンが必要になるまでは生かしておこう。 こうして何匹かゆっくり霊夢を捕まえた俺は、籠に詰めるとさっそく家に向かった。 帰る途中で、 「おにーさん、どこにゆっくりたちをつれていくの?」 「ここ狭いよ!ゆっくりできないよ!」 「はやくれーむ達を出してね!」 とか聞こえてきたが全て無視した。 家に着くと、俺はゆっくりたちを木製の箱に詰めた。最初は 「おにーさん、ここ狭いよ!出してよー!ゆっくり出来ないよー!」 と叫んでいたゆっくりたちだったが、詰められた後に餌を与えられるとすぐに懐いてきた。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせー!」 本当に単純な思考回路を持ってるな。 あとは、畑か家がゆっくりに襲われるのを待つだけだ。 それにしても、復習する為にわざ襲われるとは、本末転倒だな... それから5日が経った。家の近くにある茂みに隠れていると、 「おっ、来た来た。」 何も知らないゆっくりの家族が俺の畑にやってきた。 親霊夢と親魔理沙の2匹に加え、4匹ほどの子ゆっくりたちがいた。 子ゆっくりの内訳は、霊夢が3匹、魔理沙が1匹だった。 俺はこの日のために罠をしかけておいた。 ゆっくりたちに分かるように、畑の一箇所にいくつかクズ野菜の塊を放置していた。 無論、被害が出ないように育てていた野菜は収穫し、家の中も散らかりそうなものは全てしまって鍵をかけておいた。 クズ野菜の塊に気づいたゆっくり達は、さっそく餌にありつく。 しかしその瞬間、ボソッと餌ごとゆっくり達の姿が消える。 落とし穴にかかったのだ。 「かかったな、阿呆めが!」 そう言って、俺は茂みから飛び出し、落とし穴に近づいた。 「重いよー!れーむたちをゆっくり助けてー!」「おかーさん!この野菜臭いよー!汚いよー!」「何があったんだぜ!ゆっくり教えるんだぜー!」 そこで俺はこう言った。 「大丈夫かい?ゆっくり助けてあげるよ!」 「おにーさん、れーむたちを助けてー!」 「いーよ、でもちょっと待っててねー!」 そう言って、俺は家に向かった。家の押入れには俺があらかじめ捕まえたゆっくり霊夢たちが入っていた。 餌は十分に与えていたし、そこそこ大きい箱だったので、殺し合いはしていないようだ。 「明るいよー!おにーさん、ゆっくりしよー!」 「れーむ達の家でゆっくりしていってね!」 「暗かったよー!やっとゆっくりできるね!」 ゆっくり霊夢達が、それぞれ思い思いの感想を口に出しているところを、俺はいきなり握りつぶし始めた。 「痛いよー!ゆっくり出来ないよー!離しtt!!!」 「おにーさん何するのー!ゆっくり出来ないならさっさとdd!!!」 必死に叫ぶ霊夢たちを全て握りつぶすと手を洗い、早速その箱と紐が括り付けられた桶を持って落とし穴に向かった。 続く... Part.2へ このSSに感想を付ける
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ゆっくりとりひきしていってね!2 1はfuku1985.txt 翌日、れいむたちが起きたのは正午。 満腹だったから熟睡できたのだろう。 しかし、起きてすぐにれいむは思い出した。 「ゆ・・・たべものどうしよう・・・」 そう。 自分達の何かを代償に、食べ物が得られる仕組み。 れいむは素直というか物分りがいいというか。 このシステムに反対はしなかった。 無論、まりさも。昨日までは。 「ゅ・・・おなかすいたよ!」 まりさもやっと眠気から覚めたようだ。 無論、まりさの餡子脳では昨日のシステムを覚えているはずも無い。 「まりさ、たべものどうしよう・・・れいむたちのからだをおにいさんにあげなきゃいけないんだよ」 「ゆ?・・・ゆゆ」 まりさもやっと思い出した。 しかし、基本自己中心であるまりさ。 そんなこと言われれば言うことは唯一つ。 「まりさはいたいのはいやだよ!!れいむがやってね!!!」 「ゆ!!?れいむだっていだいのい”や”だよおおおおおおお!!!」 まあ自己中心でなくとも痛いのが好きだどというマゾヒストはそういないだろう。 こうやって口論になるのは当然といってもいいことだ。 しかし、ゆっくりの中で頭の良さはまりさが上なのだ。 まりさはれいむをゆっくり口説いていく。 「・・・ゆ!ならきょうはれいむがやってよ!あしたはまりさがするよ!それでいいでしょ?」 「ゆ・・・」 まりさの提案。 日代わりで交代して食料を貰う。 確かにそうすれば多少痛くてもゆっくりできる。 れいむはまりさがうそつきということを知らない、あっさりと信用してしまった。 「ゆ・・・ゆ!わかったよ!きょうはれいむがやるからまりさはあしたゆっくりよろしくね!!」 「わかったよ!きょうはれいむおねがいね!!」 まりさがこの時おおこわいこわいの顔をしていることはれいむは気づかない。 頬を千切られる恐怖でいっぱいだった。 結局昼は抜いた。 寝起きはあまり食べる気はしないのはゆっくりも同じだった。 夜 呼び鈴を押すと少年が舞い降りた。 それはもう満面の笑みで。 「食料が欲しいのか、そうかそうか。なら何がいい? 生ゴミか?くず野菜か?果物?3日分の・・・は無理だな。 1週間外出するか?楽しいぞ?」 れいむは察した。 おにいさんはたのしんでいる。 れいむたちをいじめること。 れいむたちのあかちゃんをころすことをたのしんでいる。 しかし、ここから出れない以上、逆らえない。 逆らえば食料を貰えず、そのまま餓死。 少しでも生き延びたいならここは押さえるべきなのである。 「ゅ・・・おにいさん!この『なまごみ』ってかいてるのをちょうだい!」 「生ゴミでいいのか・・・?まあいいさ、ご希望には全力でお答えするのが俺のルール。」 そう言うと少年はれいむを持ち上げた。 まりさにはそれがれいむだけを逃がそうとしているようにしか見えない。 「ゆゆ!!ずるいよ!!れいむだけおそとにだそうとしないでね!!」 「違うさ。すぐに戻る。すぐにな。さて・・・」 少年はれいむのほうを見る。 れいむは既に恐怖で震え怯えている。 「ゆ・・・ゆっくりしてね」 「ほお、いいのか・・・ゆっくりで。それじゃはじめるぞ」 少年はれいむの右頬をつまむ。 そして少しずつ、れいむの言われたとおりにゆっくりとねじる。 少しずつ、ブチブチと、亀裂が走る。 「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”!!!!いだだだい”いだいだいだいだい!!!!!」 「ならやめるか?その場合食料はなしだ。」 「れいむ!はやくしてね!たべものがでなかったらゆるさないよ!!!」 「どおじでそんなごどいう”のおおおおおおおおおお!!!!!???」 まりさから罵言を受けるれいむ。 そのときの少年はにやけていた。 「いたいのか。じゃあやめてやる」 少年は手を離しれいむをケースに戻そうとする。 「や”り”ま”す”う”う”う”う”う”!!!た”か”ら”や”め”な”い”て”ぇええええ!!!!!」 「どっちだよ、仕方ない」 少年は再びゆっくりとねじる。 「は”や”く”し”でぇええええ!!!い”た”い”の”おお”お”お”お”!!!」 「なら見せてやる、これが俺の全力全開!」 「ふんっ」と気合を入れて少年は千切る。 その千切りはまさに神速。 ありのままに説明すると気合を入れたと思ったら既に千切れていた。 何を言っているのか分からないとは思うがナレーションを勤める私にさえ分からない。 ただいえることはこの少年には何か秘められた力がある。 今はそれが少し垣間見えただけである。 しかしそれが開花するのもそう遠くないだろう。 それはおいておいて、ちぎられたれいむはというと、 「・・・!!!???いあだあだあだああああいあいいい!!!!!!」 頬に電流走る―――― ではなく頬に激痛が走っていた。 あまりの痛さに最初は気がつかないほどだ。 しかし、それよりも驚くのはまりさだ。 れいむが傷ついているのもなんのその。 「おにいさん!はやくたべものをちょうだい!!」 「まりさ”あ”あ”あ”あ”あ”・・・・!!!!」 「勿論だ。ほれ、生ゴミだ。」 少年は袋を持ってきて1食分の生ゴミを放り入れる。 まりさの帽子に見事ヒットし、まりさの帽子から「ベチャッ」と音がした。 「ま”り”さ”の”ほ”う”し”か”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」 「昼食、一人分だけだ。残してもいいが生ゴミに関してそれは推奨しない」 れいむを放り投げそうだけ伝えると少年は姿を消した。 「まりさ!ひどいよ!!れいむよりたべものなの!?そんなまりさとはゆっくりできないよ!!」 れいむは頬を膨らまし威嚇する。 それを見たまりさは必死に弁明した。 「ごかいだよれいむ!おなかがすいてればひっしになるのはとうぜんだよ!ゆるして!!」 それを聞いたれいむはまたもあっさり認める。 「ゅ・・・。わかったよ!あしたはまりさがやってね!!」 「わかったよ!まずはごはんをたべようね!」 まりさは我先にと生ゴミをかぶりついた。 「ゆゆゆ!!ずるいよ!れいむのぶんものこし・・・て?」 まりさの顔が青く、苦虫を噛んだような表情に変わってゆく。 B級ホラー映画になら出演できるような顔になっていた。 「ぶぅっぇええぇえええ!!!!まずいよ!くさいよ!こんなのたべものじゃないよおおおお!!!!!」 ベッとまりさは生ゴミを吐き出した。それは確かに臭くて食べられなそうだった。 それを嗅いだれいむは怒った。 「ゆ!!きっとおにいさんがまちがってだしたんだよ!もういちどおにいさんをよぶよ!!!」 れいむは呼び鈴に何度も体当たりする。 少しして少年がやってきた。 今回は舞い降りず、走ってきた。鬼の形相で。 「うるせぇよ!呼び鈴は一度押すだけでいいんだよ!!今度何回も押したら焼き土下座させるぞゴルァアアアアアァァァ!!!」 「「ごめんなああっさああああぁあぁぁぁああいい!!!!!」」 それはまさしく鬼。後半言ってることは分からなかったがとにかく次からは1回だけにしよう。 無論、よいこのみんなもピンポンダッシュはだめだぞ? 「で、何か?」 「ゆ・・・!おにいさん!!これはたべられないよ!!まちがえたんでしょ!?はやく『なまごみ』をもってきてね!!」 「は?」 「だから『なまg「それが生ゴミだ。」 れいむは意味が分からず、言葉を失う。 次はまりさのターン! 「おにいさん!これくさくてまずいよ!ほかのたべものをもってきてね!!」 「何言ってるんだ、それを得る為にれいむの頬を一回千切ったんだぞ。その分がそれ。 それにそれはまずくて臭かろうが栄養は保障する。但し3食分くらいで初めて1日分の栄養が補えるんだけどな 何を言われようが一回じゃあそれだけだ。じゃあな」 「ゅ・・・ゆぅうう・・・」 まりさは落胆した。まさかこんなものが出るとは思いもしなかった。 しかし、れいむは違った。 「・・・むーsy・・・んぎゅう!!んぶぶ・・・・・・-しゃ・・・むーしゃ・・・しあわせー・・・」 「!!?」 まりさは心底驚いた。 れいむがそのまずくて臭いものを食べたのだから。 「れいむ!なにかんがえてるの!?ばかなの!?なんでそんなくさくてまずいものたべるの!?」 「これをたべればいきれるよ!!これをたべないまりさはしぬんだよ!!かわいそうだね!!れいむはいきれる!ゆっくりできるよ!!」 「いや”あ”あ”あ”あ”あ”!!!ゆ”っく”い”した”い”い”い”い”い”い”!!!」 しかしもうまりさの分は無い。れいむが全てたべ終えたのだ。 れいむは口の中が不満だが、空腹は満ちたし段々と元気になってきた。 生ゴミでも一応、栄養は補えるのだ。くず野菜と比べれば微々たる物だが、最低でも死ぬことは無い。 「まずかったけど・・・きょうはゆっくりねむれるよ!!」 まりさは暫く泣いていたが、れいむはすぐに眠りに着いた。 2日目は終わった。 しかしこの時点でまだ2匹に変わった様子は無い。 ゆっくりとりひきしていってね!2 終 _________________________ あとがき 虐待要素はあまりないよなぁ・・・ 頬を千切るとかしかない。 子供を渡すのは精神的虐待だし。 自分自身もう少し少年に虐待させたい と少し後悔してますw 代表作 ゆっくり大福 ゆっくりとりひき 2~以下続 このSSに感想を付ける
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前 ※若干オリあり? ※虐待度はやや低め ※若干罵詈雑言気味 ※読むに堪えない文章は仕様です というわけで、あっという間に出産日。 ボールの中ではさすがに出産なんて出来ないので、2週間ぶりにゆっちゅりーを外に出す。 圧迫感から開放されたものの、2週間も食事もろくにとれず、コミュニケーションも満足に出来ずの状態だったわけだから相当ぐったりしている。 「も、むきゅ・・・うぅ」 「ぱちゅりー、だいじょうぶ?ゆっくりしていってね」 そんな彼女に寄り添うゆっくりまりさ。実に健気で、美しい光景だ。 見てるとなんだか腹が立つくらい美しい。 「ゆっくりしてる場合じゃないだろ?早く子供を産んであげないと!」 腹が立ったので水を差してやった。 「むきゅ・・・そうだね、ゆっくりするならあかちゃんをうんでからだよね」 「ゆ!ぱちゅりー、ゆっくりいそいでうんでね!」 「矛盾しとるぞ、まりさくん」 などと突っ込みを入れていると、ゆっちゅりーが突然うめき始めた。 「む、むぎゅぅぅぅぅぅ・・・!?」 どうやら本格的に陣痛が来たらしい。 今までボールの中にいて全く見えなかったが、彼女の口の下には産道らしき穴がある。 まるで人間の女性のそれのようでちょっぴりいやらしい。思わず赤面しちゃったさ。 「ぱちゅりー!どうしたの?!」 「う゛うばれりゅ・・・!?」 「もうすぐらしい。まりさ、君は少し離れていなさい」 それでもなかなか離れようとしないまりさを抱き上げ、ゆっちゅりーから少し距離を置く。 「ゆ゛うううぅぅううう・・・」 出産は想像以上に難航しているようだ。 ボールで圧迫されていたせいで胎内の子供がすでに死んでいるのかもしれない。 生きていたとしてもまともに歩けないような重度の障害をわずらっている可能性もある。 「ぱちゅりー・・・ゆっくりがんばってね!」 俺の隣では自分が出産しているわけでもないのに苦悶の表情を浮かべるまりさがゆっちゅりーを励ましている。 実に微笑ましい光景だ。さっきからこんなことばっかり言っているような気もするが、むかつくくらい微笑ましい光景だ。 それと同時に、この微笑ましさの分だけ子供の姿を見たときに絶望するんだと思うと鳥肌が立ってくる。 「なあ、まりさ。俺の話をゆっくり聞いてくれよ?」 「なに、おじさん?」 「もし、ゆっちゅりーの子供が未熟児や奇形児だったらその子を口の中に隠してほしいんだ」 「ゆ!?それってまりさにk」 「静かにする!」 「ゆぅ・・・」 「安全なボールの中にいたから大丈夫だとは思うんだけど、万が一の可能性がある。あんな狭いところで我慢したのに、ようやく生まれた子供が元気じゃなかったら可哀そうだろ?」 「ゆ!おじさんのいうとおりだね」 流石ゆっくり。こんなこじつけも同然の話に素直に納得してくれる。 「それにまりさも知っていると思うけど、ゆっちゅりーは子供を産むと死んでしまうだろ?」 「ゆぅ・・・」 目を背けていたかった事実を突きつけられあからさまに落ち込むまりさ。 でも、本当に落ち込みたいのはこっちなんだぞ、このド畜生饅頭が。 「だからさ、それまで隠し切れれば良いだけの話なんだ。口の中に隠すときにはゆちゅりーの目を隠すし、他のフォローもお兄さんがするから」 「うん、わかった。ゆっくりくちのなかにかくすよ」 「ありがとう。よし、それじゃ、素早く隠せるようにゆっちゅりーのそばに行こうか?」 そう言って立ち上がると、出来る限り柔和に微笑んだ俺の表情を見たまりさは「ありがとう、おにいさん」とまりさらしからぬ殊勝な言葉を口にすると、ゆっくりゆっちゅりーの傍へと跳ねて行った。 「おにいさん、か・・・」 結論から言えば、赤ちゃんは明らかに奇形で、その上未熟児だった。 もっとも、まだおなかの中にいるのでゆっちゅりーには見えていないが、俺とまりさにはその赤ちゃんの異形がはっきりと確認できる。 いわゆる結合双生児というやつだ。しかもその子ゆっくりはまりさの右目とゆっちゅりーの左目が完全に一体化しているかなり異様だった。 ボールによる圧迫の影響で産道が小さかったこともあるだろうが、蔓から生まれてくるものよりもやや小さいくらいの未熟児なのに難産になったのはこれが原因だろう。 「ゆっぐりぃぃぃぃ・・・」 「ゆぎぃいぃぃぃ・・・」 2つの口からそれぞれに呻き声が漏れるが、その違和感にゆっちゅりーはまだ気付いていない。 産みの苦しみのせいで、そんなことを気に留めている余裕がないのだ。 「むぎゅぅう゛・・・・」 「がんばれ、ぱちゅりー!」 自分はすでに残酷な現実を突きつけられているにも関わらず、まりさはそれをゆっちゅりーに気取らせまいと、必死でわが子の安産を願う親を演じる。 本当に健気な奴だ。ちょっと前に独善的で思い上がりの激しい自信家だなんて言った自分が恥ずかしく思えてくる。 「ぎゅうううぅぅう・・・」 「もう少しだぞ、ゆっちゅりー!!」 あと少し・・・あと少しでゆっちゅりーの子供が産道から飛び出す。 俺はすぐにゆっちゅりーの視界をさえぎるべく彼女の後ろに回りこみ、まりさは子ゆっくりを口の中に隠すための準備に入った。 あと少し、あと少しで産まれる。 「む、むきゅううう!!」 俺とまりさが固唾を呑んで見守る中、ゆっちゅりーが悲鳴にも似た声を上げると子ゆっくりたちが飛び出した。 「「ゆっきゅりちちぇちぇね!」」 舌っ足らずで、あまり声も大きくなかったが紛れもなく、子供達はこの世界に生れ落ちた。 本当ならその誕生を心から祝福したいだろう。 子供達をゆっちゅりーの傍に連れて行って、彼女をねぎらってやりたいだろう。 きっと並のゆっくり、喚起のあまりにさっきの約束を忘れてそうしていただろう。 だが、このまりさは違っていた。自分のすべきことは何か?それをわきまえて、わき目も振らず2匹の、いや1対の子供を自分の口の中に丸呑みした。 「・・・まりさ、なにしてるの・・・?」 しかし、その賢明さが仇となった。子供を口の中に入れたまりさがこっちを振り返ったとき、俺はゆっちゅりーの視界をさえぎるどころか子供をしっかり見られるように彼女を抱きかかえていた。 「んぐ!?」 目の前の光景に、1週間とは言えゆっちゅりーの安産という共通の目的のため協力し合ってきた俺の予定以外の行動に動揺し、硬直するまりさ。 そして、この俺がその瞬間を逃がすはずがない。 「この腐れゆっくり!何をしやがるんだ!!」 怒鳴りつけるが早いか、飛び掛るのが早いか。まりさを捕らえた俺はさっきまでゆっちゅりーが入っていたゆっくりボールを手に取り、その中に子ゆっくりを食べた悪いゆっくりまりさを放り込んだ。 「だから・・・だから勝手に妊娠なんてしてほしくなかったんだよ・・・ッ!」 涙ながらに床をたたきつけ、すでに虫の息のゆっちゅりーを怒鳴りつける。 「ご、ごめん、なさい・・・むきゅ・・・う」 子供が奇形だった上に、夫とも言えるまりさに食べられてしまう瞬間を目撃してしまった以上、反論なんて出来るはずもない。 「お前が謝ったって仕方ないだろ?悪いのはお前を騙したこのまりさなんだから・・・」 「むむー、あいああおうあおおううう・・・」 「うるさい!」 抗議しようとするボールの中のまりさを蹴飛ばし、涙をぬぐう。 我ながら名演技だ。ゆっちゅりーが死ぬのが悲しいのは事実なんだけどな。 「こんな奴と交尾したばっかりに・・・何の罪もない子供が奇形の未熟児なんかに・・・!」 そういって更にボールの中のまりさを蹴りつける。 本当は俺が適当なこと言ってあんなボールに閉じ込めたからなんだけどな。 「挙句の果てには喰われる羽目になって・・・!」 怒鳴り散らしながら何度も何度も蹴りつける。 「ゆうぅぅぅ・・・」 ゆっちゅりーは複雑そうな表情でその様子を見守っている。 一度は愛し合ったまりさを助けるべきなのか、それとも“本当に自分を気遣ってくれていた”ご主人の悲しみと怒りを理解すべきなのか、判断しかねているらしい。 しかし、戸惑っているうちにも死が近づいてくる。どんどん体が動かなくなっていく。 「ゆ・・・ゆぅ・・・」 面白がってまりさを蹴りまくっているうちに、もはや喋ることすら間々ならなくなってしまったゆっちゅりー。 実はビッチだったことや俺の純情を踏みにじったことは今でも腹立たしいが1年近くも一緒に生活してきたんだ。 最後くらい、きちんと見送ってあげよう。そう思った俺は彼女をひざの上に乗せ、頭をなでながらお別れの言葉を口にした。 「もう最後だから言うけど、実は・・・お前の子供があんな風になったのは・・・お前がゆっくりボールに入ったせいなんだ」 このときの俺の表情は、きっと満面の笑みだったろう。 ・・・ゆっちゅりーは旅立った。実に良い表情で。そして、居間には俺とまりさだけが残された。 ボールの中のまりさの口の中には奇形の子供が1対。勿論、まりさを世話するつもりなんて微塵もない。 あいつ自身の口の中に少量ながらも食料が保存されているから、すぐに上で苦しむ出すということはないだろう。 死ぬまでボールの中で俺の嫁に手を出したことをゆっくり反省してもらおう。どんなおしおきが効果的だろうか? 振動を与えて発情させ、すっきりする前に止めてから、ゆっくりアリスの群れの中に放り込んでやるのも面白いかもしれないな。 すっきり出来ない苦痛と、アリスに囲まれている恐怖と・・・どっちで気が狂うのだろうか? そして、俺の膝の上には物言わぬゆっちゅりー。 よく見てみると子供を産んだ際に出来た産道が塞がっていない。死んでしまったから再生能力も失われてしまったのだろう。 ゆっくりと人間では交尾の方法が根本的に違う。だから人間とゆっくりが交尾をすることは不可能だ。 たまに咥えさせたり、体に空けた穴に挿入したりする者はいるらしいが、そんなものは交尾とは呼べない。 やっぱり、自然にある穴に挿入してこそ夫婦の営みだと思うんだ。そして今、膝の上にいる彼女には普段のゆっくりにないものが付いている。 そんなことを考えた直後、まりさの最初のおしおきが決定した。 もっとも、ただ見ているだけで良いのだからこんなものをおしおきと呼べるかは正直怪しいところだけど。 ---あとがき?--- ホスト規制で7回はイってしまったぜ。 今までに比べたら若干虐待描写は多めだと思います。 しかしそれでも少ないのは、作者がそのものを見せるより想像力を掻き立てるほうが良いと考えているからです。 まあ、こんなしょっぱい文章じゃ想像力なんて掻き立てられないでしょうが。 最初のお仕置きは言うまでもなく目の前でゆっちゅりーを屍姦ですね。なまじ頭が良くて義理堅いこのまりさだからこそ効果のありそうなものです。 お兄さん変態すぎます。しかも、ゆっちゅりーは好きだけど別にゆっくりが好きなわけではないとか、訳が分からん。 ホスト規制で書き込めないのでここで色々。 ゆっくりを野球に使いたいときはゴム製ゆっくりボールをご使用ください。 使い方は簡単! テニスボールサイズで、中が空洞のゴム球の中に一箇所だけ開いている穴から子ゆっくりを入れてください。 ただし、その際には背中から押し込むようにして穴の部分が口のところに来るようにするのをお忘れなく。 ゴム餡子の流出を抑えてくれるので死ぬことはありません。また、穴が開いているので窒息することもありません。 一つだけ残念なのはがっちり抑えつけられるせいでゆっくりたちの阿鼻叫喚があまり聞こえないこと。 サッカーやその他球技の場合でもfuku1391.txtにあるその競技にあったサイズのボールにゆっくりを入れて、 安全のためにゴムカバーをかければ問題ありません。さあ、皆様、ゆっくりボールでゆっくりスポーツライフをお楽しみください。 このSSに感想を付ける
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冬眠ゆっくりの子守唄 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 そのゆっくりれいむが通ると、誰もがあたたかな声をかける。 「ゆっくり、していってね」 答えるれいむは上品だった。物腰たおやかで、そして美しかった。 魔法の森の誰もがうらやむ、最上のゆっくり、それが彼女だった。 「ゆっくりー……」 柔らかな草の上に座り、ただゆっくりと日を浴びる、それだけでも花のように絵にな るゆっくりだった。 「ゆっくりちちぇっちぇね!」 「ゆっくりちちぇっちぇね!」 小石ほどのちっちゃな赤ちゃんまりさや赤ちゃんれいむたちが、蝶を追ってぴょんぴょ んと飛んでいく。それを見ると、ぴょんと横から蝶を捕まえ、赤ちゃんたちにやった。 「はい、ちょうちょさんよ」 「ありがちょ、おねーたん!」 「やさしいね、おねーたん!」 感謝するちびたちに、無言でにっこりと笑いかける。 ゆっくり特有の騒々しさもなく、控えめで、優しい。本当によく出来たゆっくりだっ た。 そのれいむは、一年を母親の下で過ごし、そろそろ一人立ちを迎えようとするころだっ た。こんなにも器量よしで気立てのよいゆっくりなので、もちろん大勢のゆっくりたち が彼女を慕っていた。 「れいむとゆっくりつきあってね!」 「まりさとゆっくりつきあってほしいんだぜ!」 「あっあっあアリスと赤ちゃんをつくりましょぉ~~~~~!」 そんな誘いにも、れいむは頬を赤らめて、つつましく辞退していた。 「もうちょっと、ゆっくりかんがえさせてね」 彼女が一体誰と付き合うのか、森のゆっくりたちはやきもきしていた。 れいむの母親は、保守的な考えの持ち主だった。 「れいむはまだまだこどもだよ! 次の春までゆっくりと成長して、それからすてきな 人を見つけるといいよ!」 れいむ本人も、漠然とそんなふうに考えていた。 まだまだ、恋というものを遠くの虹のように考えていたのだ。 だが、恋のほうではれいむを待ってくれなかった。 ある日のこと、草むらをゆくゆくとしとやかに歩いていたれいむは、隠れていた蛇に 襲われた。悲鳴を上げて逃げようとした時、石をくわえて蛇を叩きのめしてくれたゆっ くりがいた。 「このあたりは危ないんだぜ。ゆっくりしないで通り抜けてね!」 そのまりさは、れいむにしばらく目を留めていたが、他のゆっくりのようにれいむの 美貌に惑わされて口説き始めたりはせず、黒い帽子を翻してそっけなく去っていった。 「すてきなひと……!」 ゆっくりれいむの餡子ハートが、きゅんきゅん鳴り始めた瞬間だった。 ほどなくそのまりさの素性がわかった。魔法の森のはずれの石地に暮らす、一人身の ゆっくりだった。 数日後、れいむはとびきり色艶のいいアマガエルをくわえて彼女に近づき、震えるハ ートに勇気を奮い起こして話しかけた。 「あの、せんじつはありがとう……いっしょにゆっくりしてね?」 「ゆっ?」 振り向いたまりさは、しばらくれいむを見つめてから、やがてにっこりとほほえんで くれた。 「ああ、あのときの……」 覚えていてくれた。それだけのことで、れいむは天にも昇る心地になった。 「これ、おれいなの。ゆっくりたべてね……?」 まりさはカエルを見て、べろんと舌を伸ばして食べてくれたが、ふいと向こうをむい てしまった。 「ありがとう。でも、ゆっくり帰ってね」 「どうして? れいむ、もっと……まりさといたいよ」 「ゆぅぅ、それはだめだよ」 「どうして?」 「だってまりさは……ばつをうけている身だからね」 まりさの告白は、衝撃的なものだった。 彼女はむかし、母親や姉妹たちと大きな家族で暮らしていた。ある日のこと、その家 族がゆっくりれみりゃに襲われた。母まりさが立ち向かい、子供たちも必死に手助けし たが、空を飛ぶゆっくりには勝てなかった。母も姉妹も体のあちこちをつまみぐいされ、 身動き取れなくなった。 そのとき、一人だけ無傷だったこのまりさは、家族を捨てて逃げたのだった。 「おかあさんがさけんでいたよ。『まりさだけでも、逃げてゆっくりしてね……!』っ て」 だが森のゆっくりたちは、このまりさに冷たい目を注いだ。家族を見捨てたゆっくり としてつまはじきにし、森のはずれのこんな寒々しい土地に追い出したのだ。 そこまで聞いた時、やさしいゆっくりれいむの目から、熱いものがあふれ出した。 「どお゛じでぞんな゛目゛にあっでるのぉぉ……!」 同情が胸を締め付ける。その痛みはすぐに、甘い共感に変わった。 我知らずれいむは、まりさに頬をすりつけていた。 強く強く、いっぱいの気持ちを込めて、すりすりと……。 「れ、れいむ……」 「つらかったよね、さびしかったよね……!」 すり寄るれいむに対して、まりさはとうとう何も言わなかった。 だが、別れ際に一度だけ、自分からそっと頬を当ててくれた。 れいむには、それだけで十分だった。 その日から、二人のひそかな逢瀬が始まった。 森のゆっくりたちの目をかすめて、石の荒地で、木陰のうろで、滝つぼの陰で、ふた りは密会を重ねるようになった。 密会といっても、二人とも前の冬に生まれたばかりで、まだ若い。子作りを求める、 燃え立つような情欲とは縁遠い。れいむが浮き立った調子で日常のことをしゃべり、そ れにまりさが時折あいづちを打つというような、他愛のない時を過ごしただけだった。 孤独なまりさはれいむの話を聞くと、ほかのゆっくりが気づかなかったようなれいむ の苦労を汲んで、ぽつりと同情してくれた。 「ゆっくりは、顔じゃないんだぜ」 「れいむは顔よりも、心がすてきだと思うんだぜ」 またそんなまりさも、おのれの美貌におごらない、謙虚で正直なれいむに惹かれていっ た。 「おかあさんや妹たちに、いつまでもゆっくりしてほしいよ」 「まりさのことも、きっとみんなはわかってくれるよ!」 夏の間、ふたりはそうやって、穏やかに愛をはぐくんでいった。 秋に入ると、ゆっくりれいむは冬支度を始めた。 優しいながら芯のしっかりしたこのれいむは、生まれて一年もたたないうちから、一 人で越冬をすると決めていたのだ。 外敵の近づきにくいイバラのしげみの奥に穴を掘り、着々と食料を貯めて行くゆっく りれいむの姿に、最初は心配していた母れいむも、許可を出してくれた。 「しんぱいだけど、だいじょうぶそうだね! がんばってゆっくりしてね!」 「うん、れいむがんばるね!」 幼女期を過ぎて少女期に入ったばかりのれいむではあったが、必要な餌の量や穴の広 さを本能が教えてくれた。れいむは着々と準備を進めていった。 ひとつ、気がかりなのは、あの仲良くなったゆっくりまりさのことだった。れいむは まりさと一緒にいたかった。 だが、結婚の誘いを口にするには、れいむはまだまだ幼かった。 もしそんな誘いをしたならば、一冬をずっと同じ穴の中で過ごすことになる。まりさ と夜を過ごしたことは、いまだに一度もなかった。そこで何が起こるのか、少女の活発 な妄想力をもってしてもさすがに考えが及ばず、れいむは一人、顔を赤くして首を振る のだった。 ――まだはやい、まだはやいよ! もっとゆっくりなかよくなってから……! 冬ごもりの食料は莫大だから、簡単には移せない。つまり、思いつきで移住すること は出来ない。どちらにしろ、今年は一人で過ごすことが決定していた。 森の木が色づきだしてからというもの、まりさのほうも冬支度を始めているようだっ た。ときおり遊びにいったれいむは、石穴での彼女の冬支度が、それなりに順調に進ん でいるようだったので、ほっとした。 そのころのれいむは、まりさの視線を感じて小麦粉の頬を熱くすることが増えていた。 まりさも同じように考えてくれている――そんな確信があった。 季節が移りゆき、とうとう幻想郷に初雪が降ったある日。 いよいよ冬篭りの支度をすっかり整えたれいむは、銀世界に顔跡をつけていっさんに 走っていた。 「ゆっ、ゆゆっ、ゆっ、ゆゆっ!」 今日は三ヵ月を越える冬ごもりを始める日。巣穴の入り口を閉じる前の、最後の逢瀬 だ。 石地の巣穴にたどり着くと、期待したとおり、その入り口はまだ開いていた。 「まりさ、いる?」 「れいむ? ゆっくりしていってね!」 聞き慣れた誘いの声。れいむはこの上ない喜びを覚えて、巣穴に入っていった。 「いよいよだね……!」 「ゆっくりと生き延びようね……!」 感無量で見つめあう顔と顔。自然の厳しさはお互いに知っている。うまくゆっくりで きなければ、再び会うことは出来ないかもしれない。 そんな切羽詰まった思いが、若いれいむに思い切ったことを口走らせた。 「あの……あのね、まりさ!」 「ゆっ?」 「もしこの冬篭りに成功したら……わたしとけっこんしてね!!」 白玉楼から飛び降りる思いでの大胆な告白。もちもちした頬を真っ赤に染めて、れい むはぎゅっとうつむく。 期待と不安に餡子が高鳴る。まりさはなんて答えるだろう。孤独なひとだから、断ら れるかもしれない。実は他に好きな人がいるかもしれない。乙女ゆっくりの想像力が暴 走しかけていく。 「ゆ……ゆぐ……」 のどに詰まったような不思議な声。おそるおそる声を上げると、まりさは顔を背けて むこうを向いている。 まりさを困らせてしまった――その思いに、れいむは足場が消えてなくなったような 絶望を覚える。やっぱり、自分の思い込みだったんだ。まりさは、ただの友達としか思っ てくれていなかったんだ……! 「ご、ごめんね、まりさ! 変なこと言っちゃった。……ゆっくりしていってね!」 最後の挨拶を残し、出て行こうとするれいむ。 涙を見られる前に。 ところがその後ろ髪が引っ張られる。ころんと転がって振り向いたれいむが見たのは、 真っ赤に染まって、怒っているようなまりさの顔。 「わ……わるかったよ、れいむ!」 「ゆっ?」 「な、なんて言っていいか、わからなかったんだぜ! うれしすぎて!」 言うが早いか、まりさは寄ってきた。柔らかな肌とふさふさの金髪がれいむの頬に押 し付けられる。 「まりさもだいすきだぜ! きっと、きっとけっこんしようね!」 「ゆ……ゆぅぅぅぅ!!」 歓喜の声がのどから漏れる。餡子脳をまたたく間に餡内麻薬が満たしていく。押し寄 せる幸福感、高まるヘヴン状態。 「ま、まりさ、うれしいよ……!」 「れいむ、ほんとにだいすきだぜ……!」 むにむにと頬をこすりつけ、何度も言葉を掛け合う。 こんなに幸せな思い出があれば、長い冬ごもりもぜんぜん苦しくない。少しの後悔も なくここを離れて、巣穴に戻ることが出来る。れいむはそう思った。 が――。 「ゆ、ゆく……ゆふ……」 「ゆぅ……ゆむぅ……」 押し付けた肌のぬくもりが、あまりに心地よすぎた。 愛しい人との距離が、あまりに近すぎた。 いつの間にか二人は言葉を忘れ、短い声だけを漏らして、体をゆすりあっていた。 そう、それは……二人がまだまだ早いと考えていた、愛の営みのきざし。 実際、二人はそんなことをするつもりは毛頭なかった。 ただただ、その心地よく温かい行為を止めたくなくて、じわじわと続けていただけな のだ。 しかし、いくら自覚がなくても、幼い餡子体に目覚めつつある官能は、そのまま消え てくれはしなかった。むしろ二人が押し合うのに合わせて、急速に高まりつつあった。 「ゆっゆっ……ゆっゆっゆぐっゆぐっ」 「ゆは、ゆは、ゆふ、ゆふ、ゆふぅぅ……ま、まりさぁ……へんだよぉ……」 頬を染め、とろんと溶けた目でつぶやくれいむ。 ふと相手を見れば、同じように快感に目を細め、唇をゆがめている。 そのまりさが、はっとれいむの視線に気づき、何か言おうとした。 「れ、れいむ……ゆっくりとやめようね……?」 彼女はまだ理性を残していた。今このタイミングで営みを始めたら、どんな悲劇的な 結末が待っているか、きちんと想像が出来た。 結末――それは恐ろしい光景だ。一人で巣穴に帰ったれいむが、腹の痛みを感じる。 そして何日かのあとに子供を産み落としてしまう。 一人用として準備された、巣穴の中で。 見詰め合ったまま、二人はわずかに逡巡した。 だがれいむは、しとやかで相手の望みを慮る性格のために、感じてしまった。 まりさがこらえている飢えを。芽吹きはじめた欲情を。 ――まりさがれいむをほしがってる……すっきりしたがってる……! それゆえに、れいむは揺すり続けた。 美しい頬をすりよせ、唇の端をまりさの唇に沿わせ……。 「まりさ、いいよ、まりさ……」 「ゆっ、れいむ、れいむ?」 「れいむはいいの。してほしいの。ねえ、すっきりしていってね……?」 魔法の森で一番とたたえられた、青いほど若く美しいゆくっりれいむの、健気な誘惑 ……。 それに、長い間孤独にさいなまれ、れいむを慕い続けていたまりさが、抗えるわけが なかった。 「れっ、れいむ、いいの、ほんとにいいの?」 「いいの、いいのぉ、まりさなら、ゆぅん、いいのぉっ……!」 まだ幼い、餡子皮もろくに厚くなっていない、青い果実のようなれいむがあえぐ。 「れいむっ、すきだよっ、れいむ、ほんとぉぉぉ!」 人の情けを知らずにたった一人で生き抜いてきた、飢えたまりさがむさぼる。 舌を伸ばしてべろべろと舐めあい、湿った頬をぐにぐにとすりつけ、野獣のように汁 まみれで愛し合う。若く未熟だといっても、いや、若く未熟だからこそ、二人の愛はと どまるところを知らなかった。 「ゆっ、ゆおっ、ゆふっ、ゆむぅっ♪ まりさっ、きもぢいい、ぎもぢいいよぉぉ!」 「れ゛いむ゛ッ、れい゛む゛っ、れ゛いむ゛ぅぅ、だいすきだよぉぉぉほぉぉ!」 「もっどっ、もっどじでっ、ぐるっ、ぐるっ、なにがぎぢゃぅぅぅぅ!!」 「まりざも、まりざもっ、れるっ、れるっ、なにかがれる゛ぅぅぅ!!」 ずくんずくんと押しつけるまりさの動きが最高に高まった瞬間、れいむは感じた。 じわじわぁぁっ……! と自分の中に染みとおってくる、まりさの愛のこもった熱い 波を……。 その途端、真っ白な閃光が丸い餡子体のすみずみまでも走りぬけ、れいむは我知らず に絶叫していた。 「すっきりーーー!」 「すっきりーーー!」 同時にまりさも叫び、柔らかい体をべったりとれいむに密着させたまま、ふるふると 硬直した。 白一色の野原の中、小さな穴倉で人知れず重なり合った二人の上に、新たな冬の使者 が音もなくはらはらと降り積もり始めた……。 ゆっくりれいむは枯れ草を敷き詰めた穴倉に、じっと座り込んでいた。 冬篭りを始めて一週間。――食料の消費は予想通りで、念入りにふさいだ入り口から は雪の一片も漏れてこず、冬篭りはすべて問題なく進んでいるようだった。 しかしれいむの顔は、心なしか青かった。 ――だいじょうぶ、だいじょうぶ! ゆっくりしてればいいの! 自分に言い聞かせつつも、思い返してしまうのは、あの日のことだ。 生まれて初めての衝動に押し流されるまま、自分の体のすべてを与え、恥ずかしい痴 態をさらしてまりさとひとつに溶け合った。それ自体は例えようもなくすばらしい愛の 出来事だった。 だが、終わったあとに残ったのは、取り返しのつかない愚行をしてしまったのではな いかという、巨大な不安――。 「れ、れいむ……」 おろおろとうろたえながら、まりさが何かを言おうとした。 「……こっちでゆっくりしていく? まりさはかまわないよ」 だが、出てきたのはこんな益体もない台詞だけ。もとよりまりさの巣穴にはまりさの 分の食料しかない。たとえまりさが身を投げ打ってくれたところで、来るべき事態の解 決にはならない。 れいむにまりさを責める気はなかった。あの流れの中で、自分は確かに、人生の分岐 点をこちらへと渡ったのだ。 一時の快楽に押し流されて……。 「ありがとう、まりさ。れいむはおうちにかえるね」 にっこりと笑って、れいむはそう言った。 まりさが好きだった。だから心配をかけたくなかった。 ただ、どうしたわけか、涙だけは目じりからぽろぽろとこぼれた。 「ゆっくりしていってね、まりさ。れいむはだいすきだったよ!」 「れ、れいむぅぅぅ……」 同じように涙を流し、何度も抱擁して、まりさは送り出してくれたのだった。 「春になったらむかえにいくからね! ぜったいいくからね!」 ……そんな声を背に、れいむは巣穴に帰ってきたのだ。 「ゆっ、ゆゆっ、ゆんっ!」 ふるふると頭を振って、自分に活を入れる。 「ゆっくりできるよ、ゆっくりしてるよ!」 すべては杞憂なのだ。こうして座って、辛抱強く食料を食いつないでいけば、やがて は春が来るのだ。 そうして、ある暖かな一日に薄暗い穴の中で目を覚ますと、入り口を掘りあけてまり さが来てくれるはずなのだ。 「ゆっくりしすぎたぜ、れいむ!」 そうやって、微笑んで……。 ぐりゅ、と頭皮の上で何かが動いた。 「……!」 れいむは頭をふる。何度も何度も振る。 「ゆっくり、ゆっくりしていくよ……!」 聞くものとてない冬山のイバラの茂みの奥に、そんな小さな叫びが響く。 だが――。 運命の神は――。 二人の愛の結晶を、無慈悲にも――。 「ゆぐっ、ゆぐっ、ゆゆぎぃぃぃ……!」 吹雪の吹きすさぶ厳冬の一月。 分厚い雪に振り込められた巣穴の奥に、異様な光景があった。 それは膨れ上がったゆっくりれいむ。――ただ縦方向に伸びているだけでないのは、 その口の下にみちみちと開きつつある穴から、明白だ。 産道が穿たれつつある。 一歳に達しないゆっくりれいむが、枝をつけずに胎児を孕むのは、きわめて異例なこ とだ。だがこれは、彼女自身が引き起こしたことだった。 その原因は、れいむが己の妊娠を徹底的に否定し続けてきたことにあった。 まりさとのあの日から一週間を過ぎたあたりから、れいむの体調は確実に変化してい た。食欲が異様に増え、食べても食べても物足りない。頭がうずき、何かが生えつつあ るような感覚が湧いた。 頭から枝が生えたら、子供が実る。――その程度のことは、うぶなれいむでも知って いた。 「は、はえないでね! ゆっくりはえないでね!」 頭の上に少しでも何かが突き出そうになると、壁にこすり付けて削り落とした。 だがゆっくりの体の作りは、ゆっくりであるれいむ本人にも想像もつかない神秘を秘 めていた。 枝が生えなくなってほっとしていると、今度は十日過ぎから、腹の中に違和感を感じ るようになった。 みちみちみち……。 みちみちみち……。 腹が圧迫されていく。 内側から。 まるで新しい何かが形成されているかのように。 「ゆ、冬太りになってきちゃったよ!」 「ゆっくりしてるの、ゆっくり一人ですごすのぉぉ!!」 食料の食べすぎだ、運動不足だと自らをあざむいても、詮無いことだった。 茎を作って生まれ出ることのできなかった生命が、行き場をなくして腹の中に宿って しまったのだ。 以来、それは育ちに育ち、一ヵ月半が過ぎた今では、かつてのれいむ自身に匹敵する ような何者かが腹の中にいることは、明白になってしまった。 それが今――。 いよいよ胎児としての成熟を迎え、外の世界に生れ落ちようとしている。 ふくれあがり、中からミチミチと押し開かれる産道に、れいむは懸命に力を込める。 「だめっ、だめぇぇぇ……生まれちゃ、生ま゛れ゛ぢゃだめぇぇぇ……! 出だら゛死ん゛じゃう゛の゛お゛ぉぉぉぉ!!!」 かつて誰よりも美しかったまぁるいあごの線は、無様にふくれ、見る者見る者に舐め てみたいと思わせた滑らかな餅肌には、脂汗が玉のようにびっしり浮いている。 若く美しいゆっくりだったれいむが、今は腹の膨れた妊婦となって、おのれの恥ずか しい穴を必死に引き締めているのだから、グロテスクを通り越して滑稽ですらあった。 「ゆぎい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!」 顔の下部に熱した金属棒を突っ込まれ、グリグリとこじ開けられるような壮絶な痛み が、れいむを苛む。れいむは歯を食いしばってそれに耐える。 最初のうちは外に出すまい、奥に戻してやろうという力みだったが、自然の巨大な力 の前に、そんな愚かな努力はたやすく圧潰した。今ではもう、腹の出口に宿る凶悪な痛 みの塊を、ただなんとか処理したいということしか、考えられない。 「ぎぎぎっぎゅぃいいぃいい! いだっいだっだっ、いだいよぉぉぉぉ!」 体内の餡子という餡子がマントルのように煮え返り、循環するような猛烈な苦痛が襲っ ている。その最悪の瞬間、れいむは痛みから逃れることしか考えていなかった。この痛 みをもたらしたすべての者を憎悪した。生まれつつある胎児自身、それを種つけたゆっ くりまりさ、種を受け入れた昔の自分、そしてそんな自分を世に送り出した母親までも を憎みぬいた。 「ゆっぐりじだいぃぃぃ! みんなみんなゆっくりじねぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!」 誰一人助けてくれるものもない、孤独な苦痛が最高に高まった瞬間―― きゅぅぅぅ……ぽんっ! 軽快な音とともに、一瞬で腹が軽くなった。たちまち、どっと音を立てそうな勢いで 安堵があふれ出し、れいむは至高の快楽に浸る。 「ゆっくりー!」 「ゅっ」 だが、彼女の安堵は、小さな小さなうめきを聞いた瞬間、絶望に転じた。 目を開ければ、薄暗い巣穴の床に、小さな丸いものが落ちている。 黒い帽子、濡れて波打つ金髪、ちょっぴり世をすねたような唇、まだ開いていないま ぶた……。 それは、愛したゆっくりまりさに生き写しの、自分の子供だった。 ――生まれてしまった……! ひたひたと押し寄せるその事実に、れいむは押しつぶされる。聡明な彼女には、この ことの帰結がはっきりと理解できた。 巣穴には一人分の食料しかない。 子供と二人では、間違いなく足りなくなる。 だから当然、今しなければいけないのは――間引き。 「……ゆ、ぐ、ぅ……」 それは子供を自らの手で殺すこと。大丈夫、生まれて間もない赤子はまだ世界のもの ではない。あちら側、死者の側の住人なのだ。殺すといっても、そちらへ送り返すだけ。 そう、これは「お帰し」なのだ――。 ゆっちゅりーだったか、あるいは他の誰かだったか。昔聞いたそんな理屈が、頭の中 でぐるぐると回った。 れいむはぶるぶるとおこりにかかったように震えながら、前へ進む。あれほどわが身 を痛めつけてくれたのに、子供の大きさは桃の実ほどもない。スイカ並みの大きさがあ る今の自分なら、のしかかるだけで片をつけることが出来る。 やるのだ。 やらねば。 やらなければ! ――と、そのとき目を開いた小さな子供が、きょろきょろと辺りを見回したかと思う と、輝く瞳にいっぱいの希望を浮かべて言った。 「ゆっくちちぇっちぇね!!!」 一撃だった。 それはれいむの脆い殺意を突き崩し、深い深い愛を呼び覚ますに十分な一撃だった。 幼い母親であるれいむの心に――幼いからこそ、純粋な愛がこんこんと湧き出した。 愛したまりさとの子供、自分の腹を痛めた子供だという思いが、あっという間に心を満 たした。 「ゆ゛っ……」 れいむは、その言葉を口にした。 「ゆっぐり、ぢでいっで、ねぇ……!!!」 そして滝のように涙を流し、わんわんと声を上げながら、赤ちゃんまりさに頬ずりし た。 「ゆっ? おかあたん、どうちたの? まりさがちゅいてるよ! 何もわからない幼いまりさが、早くもそんなことを言って、母に頬を擦り付けた。 母子はずっと一緒にゆっくり暮らした。 狭く暗い穴倉の中で、せいいっぱいゆっくりと……。 出産が済んだれいむは、いくらもたたないうちに、元のように丸く美しい体形を取り 戻した。子供と二人、彼女は毎日を楽しく暮らした。 子まりさも、満足しきっているようだった。 「おかーたん、ゆっくちおととにでたいよ!」 「おそとは寒いのよ。暖かくなったらね」 「おととにはどんなものがあるの?」 「きれいなお花や、可愛いちょうちょや、すてきなまりさかあさんがいるのよ」 「ゆっ、おかーたんがもうひとりいるの? まりさ、たのしみだよ!」 子まりさの幼すぎる餡子脳は、結末をまったく想像できなかった。 彼女はただ、外敵のいない快適な穴倉で、寝てもさめてもそばにいてくれる、若く美 しい母親と、壁一杯に積まれたたっぷりのごちそうに囲まれ、明るく広い未来を想像し て、至福のときを過ごしていた。 「ゆぅ・ゆ・ゆー ゆぅ・ゆ・ゆー ゆーゆゆぅゆ ゆーゆぅ……」 柔らかなアルトの子守唄を聴きながら寝かしつけられると、子まりさはついついこん なことを言ってしまうのだった。 「おかーたん」 「なぁに? まりさ」 「まりさ、とってもちあわちぇ!」 ちゅっ、と頬にキスして目を閉じる娘を、れいむはこの上なく幸せな顔で、だが滂沱 の涙を流しつつ、見守るのだった。 時が流れ、日々が過ぎていった。吹雪の音は収まることがなかったが、壁に積まれた 食料は少しずつ減っていった。 れいむにはひとつだけ迷いがあった。それは自分を犠牲にしてこの子を助けようかど うかということ。自ら招いた過ちである以上、そうすることもれいむは真剣に考えた。 だが、出た結論は、そうしたくないし、そうするべきではないと言うものだった。 母の肉体を食い荒らして育った娘が、幸せになれるだろうか……。 恋人の肉体を食い荒らして巣穴から出てきた娘を、母まりさが許してくれるだろうか ……。 そう考えれば、答えはとても簡単であるような気がした。 三月、冬の終わりを告げる最後の地吹雪が巣穴をとどろかしているころ。 食べるものが何一つなくなった、空虚な巣穴の中で、頬がこけ、げっそりと衰弱した れいむ親子が、夢うつつの境をさまよっていた。 「ゆぅ……ゆぅ……」 「ゅぅ……ゅぅ……」 寄り添った二人は、もはや苦鳴すら漏らしていなかった。おなかがちゅいた、と子ま りさが文句を言っていたのも、すでに一週間も前のことだった。 今では細い息を漏らしながら、迫り来る死を待っているだけだった。 「ゆぅ……ゆぅ……ゆっ・ぐ」 薄れる意識を漠然とたもっていたれいむは、ある一瞬、確かに自分の生が途切れたの を感じた。人間にたとえれば、弱りきった心臓が短い間、停止したというところだろう か。ともかく、死はすぐそこまで迫っているとわかった。 ――れいむ、しぬんだ……。 ――がんばったけど、ここで死んじゃうんだ……。 ――おかあさん、ごめん。まりさ、ごめん。子まりさ、ほんとにごめん……。 いつ死んでもおかしくない、と思った瞬間、れいむは細い決意を抱いた。あれほど考 え抜いて決めたことなのに、土壇場で再び母性本能がうずきだしていた。 「まりさ……まりさ」 「ゅぅ……ゅ?」 「今から、ごはんをあげるからね……いっぱいたべて、ゆっくりしてね……」 そう言って、子まりさから離れ、壁際の石へよろよろと這いずっていった。石の角で 自らを切り裂き、餡子を与えるつもりだった。 だが、その作業を始めて痛みに顔をしかめていると、ちっちゃな子まりさがゆむゆむ と必死にはいずってきて、細い声で取りすがった。 「おかーた、おかーたん、いたいいたいしちゃ、だめ!」 「いいのよ、まりさ……」 「だめなの、まりさはおかーたんがちゅきなの! おかーたんいっしょにいて!」 餡子の味を知らないから、そんなことを言うのだろう。いったん餡子を食わせてやれ ば、我を忘れてむさぼるだろう。 そうとわかってはいても、れいむは愛しいわが子を、泣かせたくなかった。 れいむは石から離れた。そしてまりさにゆっくりと寄り添って、歌い始めた。 「ゆぅ・ゆ・ゆー ゆぅ・ゆ・ゆー ゆーゆゆぅゆ ゆーゆぅ……」 眠れ眠れ母の胸に。 歌の歌詞そのまま、眠るように子まりさは静かになった。 ほどなくその静かな歌も途切れ、あとには吹雪のとどろきが残った。 汗ばむほどの陽気に包まれ、根雪が盛大に溶け流れている。 四月。魔法の森には急激な春が訪れ、すべての生き物たちがいっせいに目覚めていた。 「ゆっ、ゆゆっ、ゆっくゆっく!」 雪解けの地面を、全身泥まみれになりながら駆けていくゆっくりがいる。 黒い帽子のゆっくりまりさだ。もう五日も前から巣穴を防ぐ石版をぐいぐいと押し続 け、今日やっと、上に乗っている雪が溶けたために出てこられたのだった。 「ゆっくり、ゆっくりーっ!」 それは訪れた春を歌い上げる歓喜の声であるとともに、愛する人に聞かせる呼びかけ の声だ。皮よ破れよ帽子よ落ちよとばかりに、出せる限りの速度でまりさは跳ね飛んで いく。 イバラの茂みは、秋に記憶したとおりの場所にあった。そこは雪がまだ溶けていなかっ たが、そんなことは問題ではなかった。まりさの頭の中は、四ヶ月前に激しく愛し合っ た、美しく愛らしいゆっくりれいむのことだけが占めていた。 ――れいむ、れいむ! いま掘り出してあげるぜ! 冷たい雪を口にくわえて横手へ吐き出しながら、まりさは冬ごもりの間に数え切れな いほど繰り返した至福の想像を、再び頭の中で組み立てる。 雪をどけて扉を崩せば、待っていたれいむが涙ながらに飛び出してくるはずだ。 いや、慎み深いれいむのことだから、久しぶりの出会いにためらって、もじもじして いるかもしれない。 まさか眠っているってことはないはずだ! どれにしろ、まりさの言うべきことはひとつだけのはずだった。 ゆっくりしていってね! これからずぅっとずうっと、死ぬまで一緒にゆっくりしようね……! ゴソッ、と雪が抜けた。巣穴を閉ざす石と枝が現れた。 「れいむ! まりさだよ、ゆっくりしないで来てあげたよ!」 石と枝をくわえることすらもどかしく、もぞもぞと顔を突っ込んでまりさは入り口を 掘り抜いた。ずぼっと穴が貫通し、湿った巣穴の匂い、懐かしいれいむの甘い香りが、 ふわりと漂いだしてきた。 「れいむ!」 まりさは三日、遅かった。 ========================================================================= YT このSSに感想を付ける
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いままで書いたもの とかいはコーディネイター 植物型ゆっくり 魔理沙とゆっくり~邂逅篇~ 取替えられた子 お前なんかドスじゃない ばーさすちれーでん ねるねるねるゆ ゆっくりを飼うって難しい 道を歩いていると、目の前にいきなり一匹のゆっくりれいむが飛び出 してきた。 「ゆっくりしていってね!」 「断る」 俺は迷わずそいつを蹴り飛ばし、そそくさと家に帰った。 れいむはゆっくりしていってねと言ったのにゆっくりしてもらえない どころか蹴り飛ばされて自分がゆっくりできなくなったので草葉の陰 で泣いた。 それから一週間。 俺はまたあの時の道を歩いていた。 すると、目の前に一匹のゆっくりれいむが飛び出してきた。 「ゆっくりまっ」 「断る」 喋っている途中のれいむの口目掛けて爪先をねじ込み、そのまま何度 か爪先を持ち上げたり勢い良く地面に振り下ろしたりしてから適当な 方向へ投げ捨てる。 れいむはゆべっとかゆ゛っゆ゛っとか呻きながら白目で口から泡など 吐いて痙攣していた。俺はそれを見届けると、れいむが通行の邪魔に ならないよう道の脇にそっとどけてそのまま家に帰ろうとする。が、 やけに足首が重いような気がして(気のせいかと思ってしばらくその まま歩いてたが、やはり重い)見てみると、まるで地面を引き摺られ てきたような哀れな姿になったれいむが靴紐に必死にしがみついてい た。 「ゆ゛……ゆ゛っぐり……ま゛っでね……」 「あ、あぁ……」 その地獄から響き渡るような声に俺はつい返事をしてしまう。 すると、れいむは急に元気に立ち上がった。 「ゆふふ……れいむはこのまえゆっくりしてくれなかったおにいさん をゆっくりさせるためにきびしいしゅぎょーをつんできたんだよ! ちからづくでゆっくりさせてあげるからかくごしてね!」 れいむはそう言って、きっとこちらを睨みつけてきた。 そして、俺は…… 「……………………………………………………………………この前?」 「どぼじでおぼえでないのー?!」 全く身に覚えがないのでとりあえず困っておいた。 れいむは泣いた。自分はずっとお兄さんの事を考えて過ごしてきたの に、お兄さんはれいむの事などどうでもよかったのだ。 お兄さんはそんなれいむを見かねて、若干申し訳なさそうな表情を浮 かべる。 「いやぁなんかスマン。全く覚えてないけど。今日は別に急いでない からゆっくりしてやってもいいぞ」 お兄さんからの提案。 ゆっくりしてないお兄さんからの完全降伏。これを受けてれいむは。 「どぼじでぞんなごどいうのー?!」 泣いた。 そしてそのまま続ける。 「それじゃせっかうのしゅぎょーがむだになっぢゃうでじょー?!」 「俺にどうしろと」 若干目的を見失っている感のあるれいむにお兄さんは言う。れいむは 器用にもみあげを動かして涙を拭うと、お兄さんを見上げて告げた。 「れいむとせいせいどーどーしょうぶしてね! れいむがかったらゆ っくりしてもらうよ!」 「……まぁ別にいいけど死んでも恨むなよ?」 所詮はただの饅頭であるれいむを労わりそう言ってきた。しかし、そ のような言葉に恐れるれいむではない。 「ゆふふ、りょうてりょうあしへしおってでもゆっくりしてもらうっ てばよ!」 「そんな状態じゃゆっくりできねーよ」 「うるさいよ! じゃあいくよ!」 そして闘いが始まった。 「ゆふふ、これがれいむのひっさつわざだよ! ぶんしんのじゅつ!」 れいむが叫ぶと、突如れいむの姿がゆっくりしてない速度で動き始め やがて残像が見えるほどになる。しかも、その残像は少しずつはっき りとした輪郭を持ち始め、とうとう元のれいむと同じ姿を持って地面 に立ったではないか。 4つに増えたれいむ達は揃って声を上げた。 「「「「これじゃどれがれいむかわからないでしょ! ゆっくりこう さんしてね!」」」」 「じゃあとりあえず一番右端から」 俺はなんとなく選んだそいつに軽くケリを入れてみる。 「ゆびぇっ?!」 そいつは潰れた饅頭のような悲鳴を上げると勢いよく後方に吹っ飛び ボールのようにぽよんぽよんと弾むと太い木にぶつかり、また潰れた 饅頭のような悲鳴を上げて止まった。 その様子を見て、残った三匹のれいむは薄笑いを浮かべて叫ぶ。 「「「ひっかかったね! そっちはほんたいだよ!」」」 「本体がやられちゃ……駄目なんじゃないか?」 そう聞くと、三匹の分身は揃って小首をかしげ、「何を言ってるんだ こいつ」みたいな顔をする。 「おにいさんのいうとおりだよ! ぶんしんははやくたたかってね!」 と、その間にずりずりと元の位置まで這ってきた本体が声を上げた。 三匹の分身は無様な本体の姿を一度見下ろし、お互いの顔を見合わせ て相談を始めた。 「だれからいく?」 「どうしよう」 「じゃあれいむがいくよ」 「いやいやここはれいむが」 「でもあえてれいむがいくよ」 「れいむがいくって」 「ぎゃくにれいむが」 「やっぱりれいむが」 誰かが声を上げると他の誰かが志願し、それを見たほかの誰かがさら に立候補する。 いつまでも終わらない議論。それを見ていた本体は憤り声を上げた。 「なにしてるの! ぷんぷん! こうなったられいむがいくよ!」 「「「どうぞどうぞ」」」 分身たちはこれ以上ないほど息のあった声を上げた。 そして本体のれいむは不敵な笑みを浮かべながらこちらに向かって飛 びかかってきた。 「おにいさんはゆっくりしたれいむにゆっくりやられてね!」 思い切り跳ね上がるれいむ。その位置は丁度俺の右拳の延長線上。 俺は躊躇わず拳を打ち込んだ。 打ち下ろし気味の右拳は容赦なくれいむを地面に叩きつけ、スーパー ボールよろしくれいむを上空へと跳ね上げた。 およそ3メートルほど。その高さから落ちながられいむは叫ぶ。 「どぼじでごうなるのーーーぉんぶ?!」 そして顔面から地面にぶつかり、再度潰れた饅頭のような声を上げた。 戦場がしーんと静まり返る。この隙に攻撃すればもう終わりなのだが、 そういうのはオサレではないしなんだか悪い事をしてるみたいな気分 になってきたので控えておく。 しばらくして、れいむが起き上がって言った。涙を滝のように流しな がら。 「でいぶいだいのもうやだ! づぎごぞぶんじんがいっでね!」 そしてぽよんぽよんと分身たちの後ろに隠れようとする。 集まっていた分身たちはサッと別れ、三方から本体れいむを取り囲む。 「だいじょうぶ! つぎこそかてるよ!」 「もーいっかい! もーいっかい!」 「ほんたいさんのちょっといいとこみてみたーい!」 そして、見事なコンビネーションで本体れいむをおだて始めた。 「ゆ~、じゃあもういっかいだけだからね!」 「「「ゆわーい」」」 普段褒められ慣れていないれいむは棒読みくさいその言葉にあっさり と乗せられ、まだ涙の跡が残る顔をこちらに向けて跳ねてきた。 「れいむにぶんしんたちのまえでいいかっこさせてね!」 そう言って渾身の体当たりを繰り出してくる。 その姿が余りに痛々しくて、俺は右拳を入れてやらなくちゃいけない 所をつい平手でべちんと頬を引っぱたいてしまう。 「ゆべしっ!!」 横から衝撃を受けたれいむは、綺麗なきりもみ回転を疲労しつつ頭か ら地面に突き刺さった。 まさか平手でもそこまでのダメージを負うとは思わなかった俺は、上 下逆さで地面に横たわるれいむにそっと手を伸ばす。 「ごべんなざいーー! もうでいぶのまげだがらいだいごどじないで ねーーー?!」 と、それを追撃だと思い込んだれいむは大声で泣きながら降参の意を 示した。 大声で泣き続けるれいむを前に、すっかり困った俺は残っている分身 たちに目を向けた。 分身たちはにたにたと笑っていた。 「ゆふふ、ほんたいがやられたようだね」 「ほんたいはれいむたちのなかでもいちばんのこもの」 「にんげんさんごときにやられるとはれいむのつらよごしだよ」 「「「おぉよわいよわい」」」 先ほどまでの嫌らしい笑みから一点、大声で笑い始める分身たち。本 体のれいむはその場で(上下逆さで動けないため)声を上げた。 「どぼじでぞんなひどいごどいうのー?!」 「うるさいよ!」 「うごけないほんたいなどひつようないよ!」 「ゆっくりしね!」 そう言って分身たちは揃って上下逆さの本体の上に飛び乗り、本体れ いむを押し潰した。 「ゆぴぃっ!」 「「「きたないはなびだね!」」」 三匹が縦に重なりまるでトーテムポールのような形になってそう言う 分身たち。こいつらどこの戦闘民族なのだろうか。 俺は、いい顔でそこに佇むトーテムポールに向かってささいな疑問を 投げかけてみた。 「お前ら、分身なのに本体なしで存在できるのか?」 「「「…………」」」 それを聞いた分身たちは、目を白黒させる。 そして、揃ってこう叫んだ。 「「「うっかりー!」」」 分身たちが叫ぶと同時に、一番下の分身の体が潰れた本体れいむの餡 子の中へずるずると引きずり込まれだした。きっと母なる海へと帰る のだろう。 涙目になった分身達は、引きずり込まれながらも俺に向かって言葉を 投げかける。 「これでかったとおもわないでね」 一匹目が完全に飲まれる。 「たとえれいむがきえてもひとのこころにゆっくりしてないこころが あるかぎり」 二匹目中ほどまでが飲まれる。 「だいにだいさんのれいむがおにいさんのまえにあらわれるよ」 三匹目の足が飲まれ始める。 「そのときまでせいぜい」 そして、三匹目の頭が完全に飲まれるかどうか、という所で。 「「「ゆっくりしていってね!」」」 声を揃えてそう言うと完全に分身達はこの世から消え、後には一匹分 のれいむの死体だけが残った。 俺は、あの分身たちの言葉を思い出す。 『ひとのこころにゆっくりしてないこころがあるかぎり――』 人がゆっくりするまで、ゆっくりという哀しい存在は生まれ続ける。 人はもっとゆっくりするべきだ。それを教えるため、ゆっくりは生ま れ、そして死んでいくのだろう。 俺は、もうれいむのような哀しい存在が生まれないよう願いながら、 言った。 「さて、余計な時間を食ったし急いで帰るか」 おわり このSSに感想をつける
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ゆっくり茸狩り 初SSの為読みにくいかもしれませんが、生暖かい目で見てやってください。 幻想卿にも秋がきた。この季節になると、全ての生き物は冬に向けての準備をする。 ゆっくり達も例外では無く、冬に備えて準備をする。 巣に越冬用の餌を溜め込むのはもちろんの事、ゆっくり自身も栄養分を溜め込む。 つまりこの時期のゆっくりは年間を通して一番栄養価が高く、その為に捕食される事も少なくない。 この栄養価の高い時期限定の秋の味覚がある。それを巷ではゆっくり茸と言う。 これは秋にゆっくりに生えてくる茸というモノではない。 ぶっちゃけてしまえばゆっくりアリスのぺにぺにである。 秋のゆっくりアリスも他のゆっくり同様に冬支度を行う。 しかし他のゆっくりと違う点は、すっきり貯めを行う点である。 冬になってしまえば春までは巣の中で篭っていなければならなくなり、その間は満足にすっきり出来ない為に 秋に思う存分すっきりしまくろうとする。その為秋のゆっくりアリスのぺにぺには、非常にしっかりしている。 ゆっくり茸は、心地よい歯ざわりと、上品な甘さで非常に美味なのだ。 ゆっくり茸を採集する為の道具だが、まず用意するものとしては、ボイスレコーダーと適当な袋があれば取りあえずは十分である。 がっつり採集したいのであれば、ゆっくりまりさを3~5匹程度持って行くと良い。 次に採集方法なのだが、まずはゆっくりアリスが多い山に行く。 その後ゆっくりの巣穴を発見したら、ボイスレコーダーを使用する。 このボイスレコーダーには、ゆっくりまりさのすっきり真っ最中の喘ぎ声を入れておく。 大音量で再生していれば、いつのまにか発情したゆっくりアリスが集まってくる。 既に臨戦態勢のゆっくりアリスばかりなので、少量だけ採集するのであれば適当に捕まえて採集すれば良いが、 ここでは大量に採集するやり方を行ってみる。まずはゆっくりアリス達に 「今日は素晴らしく都会派の君達の為にまりさを連れて来てあげたよ~。存分にすっきり!!していってね!」 とでも言ってまりさを群れに放り投げる。 そうすると当然アリス達はまりさに襲い掛かり集団ですっきりしだす。 数十匹もアリスがいる為、当然順番待ちの様になる。そこを狙って収穫を行う。 全てのアリスがまりさに気を取られている為、他のアリスまで気が回らないのだ。適当に捕まえて 「君のぺにぺには凄く立派だねぇ。ゆっくりの中で1番だよ!!」 と煽る。そうすると 「そ、それはそうでしょ!ありすはとかいはだからぺにぺにもとかいてきなのよ!!」 と良い気になる。 そのスキに根元からぺにぺにをねじ切る。一瞬の事にきょとんとするアリスだが次の瞬間 「あ゛ぁぁぁ゛~~~あ゛り゛ずの゛べに゛べに゛がぁああああ゛~!!!!!」 等の叫び声を上げる。 しかし周りはまりさに夢中の為気付かないので、もっと騒がれる前に投げ捨てておく。 ぺにぺにを褒める他には 「君達がすっきり出来なくて可愛そうだから、君達の順番になるまでお兄さんがすっきりさせてあげるよ!」 と言ってぺにぺにに触れる口実を作るのも良いだろう。 この様な感じで繰り返して行けば、あっと言う間に収穫が終わる。 一通り収穫を終えると、ぺにぺにが無くなり気絶したアリスと、集団すっきりにより蔦だらけになったまりさが残るが それらは潰すなり食べるなり殺すなりすれば良いだろう。 ゆっくり茸狩りは、ゆっくりの大量発生も抑えられるし、ゆっくり茸も美味しいし、ストレスの解消にもなるので、 みなさんも参加してみてはどうでしょう? ゆっくりを相手する自信が無いという方がいらっしゃる場合は、近所の鬼意さんに相談してみましょう!! きっと親身になって相談に乗ってくれるはずです! 読んでくれてありがとうございました! なんかぐだぐだになってますが精進して行きます。 このSSに感想を付ける
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「おい、こっちにれいむ種がいたぞ!」 「殺せ!!逃がすなっ!」 森を、怒りに満ちた声が飛び交う。 数十人の男たちが1匹のゆっくり霊夢を追いかけていた。 「ゆー!!やめてね!!れいむはゆっくりしていただけだよ!?」 ぼよんぼよん。 情けない音を鳴らしながら逃げるれいむ。 「殺せ!殺せ!!」 男たちの声が、れいむの後頭部をビリビリと震えさせる。 「ごわいぃいい!!!ゆっぐりできないぃいっ!!! ――ゆっ!?!?」 次の瞬間。 れいむの眼前に木製バットが飛び込んできた。 「ゆぴぃっ!!」 そのままバットはれいむの上半分を吹き飛ばしてしまった。 待ち構えていた男がフゥフゥと息をつく。 そして、やってしまった、といった顔に変わる。 「バカ野郎!!!何してやがんだ!!!」 ようやく追いついた男たちに、バットを振るった男は怒鳴りつけられる。 「す…すみません………!!つ、つい……!!」 「つい、で済むかバカ野郎!!急いでかたずけろ!!」 「早くしねえとまた湧いて出てくるぜ!?」 「急げ!!時間がねぇっ!!」 男の一人が辺りに飛散した餡子を指さし、別の男が手際よく回収していく。 それもかなり念入りに。 餡子が触れた部分の土は、スコップで掘ってビニル袋に入れる徹底ぶりだ。 吹き飛んだれいむの餡子はかなり多く、その後3時間に渡って回収、消毒作業が行われた。 「………昨日の件でお話が」 男は村長に深々と頭を下げた。 彼は昨日、バットでれいむを潰した男だ。 「………わかっておる。この音を聞けば、な……」 村長が、耳を塞ぐポーズをとる。 見ようによっては頭を抱えているようにも見える。 「……すみません」 小さな謝罪。 それは外から聞こえる騒音にかき消されてしまった。 二階の窓から見える地面は、赤と黒で染まっている。 ぞわぞわと、波のように動きながら。 「……堤防は大丈夫だろうな」 「はい……そちらはなんとか」 大地を埋め尽くすモノ。 それらは全て、れいむ種の赤ちゃんゆっくりだ。 村を取り囲む堤防がなければ、今頃村は赤れいむであふれかえっていたことだろう。 「ワシが子供の頃は、ゆっくりはここまで繁殖力旺盛ではなかったというのに………」 うつむいたまま、村長は呟いた。 ゆっくりには、植物型妊娠と呼ばれる出産方法がある。 自身から茎を生やし、子を成すものだ。 いつからか、ゆっくりは交尾なしでも出産するようになった。 人間による駆除活動に対抗するため、多産を強化したのかもしれない。 そして人間は、それに対抗して駆除回数を増やした。 それが原因かはわからないが、ゆっくりはさらに増殖するための能力を得た。 今の凄惨な現状がその結果だ。 「………俺が餡子をブチ撒けたせいで…………!!クッ……」 ゆっくりの体内の餡子。 これが地面に放置されると、芽が出るようになった。 ほんの少しの量でも確実に芽が出る。 その芽は周囲の大地から養分を吸い取り、わずか12時間~24時間で1メートルほどにまで成長するのだ。 もちろん、それに赤ちゃんゆっくりが成る。 1本の茎から100匹近くの赤ゆっくりが実るとも言われている。 産まれた赤ゆっくりが、潰されるか何かする。 そうするともう手の着けようがないレベルで増殖する。 大量に増えると、草や木は根こそぎ食べられてしまう。 そして茎が土の養分を吸うので、土地が枯れる。 1匹のゆっくりを撒き散らすだけで、死の大地ができてしまうのだ。 世界中のゆっくりがある日を境に究極の進化を遂げてしまった。 害獣ゆっくりとしての最終進化だ。 生殖行為を行わずとも爆発的に増え続ける究極の生命。 それから間もなく人類は滅亡した。 このSSに感想をつける
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-初めに- このSSを読む前に“ゆっくり加工場”を読むことをオススメします。(加工場を書いたのは私ではありません) このまま“プチゆっくり魔理沙の生涯”を読んでもかまいませんが、以前私がUPした“ゆっくり霊夢の生涯” を読むと、内容が理解しやすいと思うのでオススメします。 ゆっくりに対する過激な虐待表現が含まれておりますので苦手な方は読まないほうがいいかと思います。 また、本編冒頭は前作と同時間軸の部分なので一部表現が同じ部分があります。ご了承下さい。 -本編- そのゆっくりの意識は暗いまどろみの中で何かを待っているかのように眠っている。 「ゆっくりしていってね!」 眠っていた意識が反応する。 「・・・ゆ、っゆっ、ゆっくりしていってね!」 そう言いながらそのゆっくりは目を覚ました。周囲では同じようにゆっくり達が目覚める。 「ゆっくり!」 「ゆっくりしていってね!」 周囲を見渡すと自分と同じゆっくりと自分とは違う形状の赤いリボンをしたゆっくりが複数いる。 ゆっくり達はここが何処だかわからずキョロキョロと周りを見回している。 その時、離れたところにある扉が開き一人の男が入ってきた。 「ゆっ!おじさんだれ?」 「ここはどこなの?」 ゆっくりが達が尋ねると男が説明をしてくれた。 ここがゆっくり達の繁殖施設であること。自分はゆっくり魔理沙で赤いリボンのゆっくりがゆっくり霊夢という こと。自分はたった今生まれたばかりであること。そして最後におじさんはこう言った、 「ここで安心してゆっくりすればいいよ。」 優しそうなおじさんの説明を聞いて自分を含め周囲のゆっくり達は素直に受け止め喜んでいた。 そしておじさんはお菓子をくれ、ゆっくり達はおなかいっぱいに食べ、ゆっくりと夢の中へ旅立っていった。 次の日、また男が部屋に入ってきた。ゆっくり達は歓迎する。するとおじさんがこう言った。 「今日はこの部屋にいる君達の半分を別の部屋へ移動させるよ。これだけの数がいると狭くて住み辛いだろうから ね。」 ゆっくり達は素直におじさんの言うとおりにすることにした。 そしてそのゆっくり魔理沙はおじさんについて行き、生まれた部屋を後にした。 部屋を出るとおじさんが、 「生まれた次の日に引越しなんてさせてしまってすまないね、お詫びと言ってはなんだがゆっくり専用のプレイル ームで遊んでみないかい?プレイルームって言うのは遊び場のことだよ。」 それを聞くとゆっくり達は、 「ゆっくり遊びたい!」 「おじさんやっさしい!」 「遊びたい!」 ゆっくり達はおじさんの提案を歓迎し、まだ生まれたばかりの小さな体を使いめいいっぱい跳びはねて喜んでいる。 そしておじさんはプレイルームのドアの前まで案内してくれた。その扉は先ほどの部屋のものとは違いゆっり達専 用なのか小さかった。 「さぁ、ここだ。ゆっくり楽しむんだよ。」 そう言っておじさんは扉を開けた。 ゆっくり達の目の前には、広い部屋が広がっていた。 ゆっくり達は無邪気に飛び跳ねて中へ入っていく。扉を閉める際男は、 「しばらくすると別の部屋につながる扉が開くから中でゆっくりしていればいいよ」 「おじさんありがとう!」 「ゆっくりするよ!」 ゆっくり達は目をキラキラさせおじさんにお礼を言った。そして扉が閉められ鍵がかけられた。 プレイルームでゆっくり達は跳びはねたり、集団を作ってゆっくりしている。 しばらくすると上から液体のようなものが落ちてきた。そしてどこからかおじさんの声が聞こえる。 「やぁゆっくり達聞こえるかい?その部屋は適度な雨を降らせる部屋なんだ。その液体は安全なものだから安心す ればいいよ。」 ゆっくり達は初めて見る雨に興味があるようで、陽気に飛び跳ねて楽しんでいる。 「きもちいい!」 「ゆっくり!」 しばらくすると雨がやみ、入ってきたときと反対の方にある扉が開いた。 「さぁ、次のプレイルームに進むといいよ」 おじさんの声を聞くとゆっくり達はわくわくしながら次の部屋に進んだ。 ゆっくり達の体は入ってきた時よりきれいになっていた。だがそのことに気が付くゆっくりは一匹もいなかった。 次の部屋にすべてのゆっくりが入ると扉が閉まり鍵がかかった。 しばらくするとゆっくり達の体が宙に浮いた。 「ゆっくり!?」 「おっと、説明する前にスイッチを入れてすまないね。その部屋は床から風が吹き出して体が宙に浮くようになっ ているんだよ。危険なことはないから安心してゆっくりすればいいよ」 はじめはびっくりして戸惑っていたゆっくり達だったが、今まで跳びはねることしかできなかった体が宙に浮き、 とても楽しそうにしている。 「ゆっくーり」 「ゆ~ゆ~ゆ~♪」 しばらくすると風が止み、ゆっくり達はゆっくりと床に着地し、次の部屋への扉が開いた。 「もっとゆっくり浮かびたかった!」 「ゆっくりしたかった」 何匹かのゆっくり達は不満を漏らしたが、おじさんになだめられ次の部屋へ進んでいった。 先ほどの部屋でぬれたゆっくり達の体はすっかりかわいていた。 次の部屋へ進むとそこは一面の白い世界であった。ゆっくり達は初めて見るものを不思議そうな顔をしてい眺め ている。そしてまたおじさんの声が聞こえてくる。 「その白いものは雪と呼ばれるものだよ、その上で遊ぶととても気持ちがいいよ」 おじさんの言葉を聞くとゆっくり魔理沙が恐る恐るその白い世界へ入っていった。そして、 「サラサラしてとっても気持ちいいよ!みんなも来て一緒にゆっくりしようよ!」 それを聞くとた躊躇っていたゆっくり達は一斉に飛び込んでいった。 白い粉が一斉に宙を舞い、ゆっくり達を包み込んだ。ゆっくり達はそんなことは気にもせずに飛び跳ねて遊んで いる。しばらくするとゆっくり達は真っ白になっていた。そう、これは雪ではない。しかしゆっくり達は本物の 雪を知らないため、真っ白になっても何の疑問も持っていなかった。 「ゆっくり霊夢真っ白、真っ白w」 「ゆっくり魔理沙も真っ白w」 そして次の部屋の扉が開き真っ白になったゆっくり達は次の部屋へ進んでいく。 次の部屋にはいくつかのくぼみがあり、黄色い液体で満たされていた。またおじさんの声が聞こえる。 「この部屋は泥遊びの部屋だよ。部屋にあるいくつかのくぼみに泥が入ってるから泥まみれになるのもよし、飛ば しあうのもよし、好きに遊ぶといいよ」 そう聞くと好奇心旺盛なゆっくり魔理沙が先陣を切って泥だまりへとダイブした。衝撃で泥が飛び散り様子を伺 ていたゆっくり達に飛び散った。 「ゆっくり霊夢にあたったあたった!」 「ゆーーーー、ゆっくり魔理沙!」 泥のかかったゆっくり霊夢は負けじと泥だまりへダイブし、ゆっくり魔理沙に泥を飛ばす。これを見ていたほか のゆっくり達は続々と泥へダイブしていく。そして楽しそうに泥遊びをした。 しかし、先ほど体についた白い粉に黄色い液体がまとわりつき、次第にゆっくり達のうごきは遅くなっていった。 「うぅぅ、体が重いよ」 「動きにくいよ」 ゆっくり達は苦痛をもらす。その時次の扉が開きおじさんの声が聞こえた。 「次の部屋で体にまとわり付いたものが落とせるよ、さぁ行った行った。」 それを聞いたゆっくり達はこぞって次の部屋へ進んでいった。 ゆっくり達は次の部屋へ行くため重たい体で飛び跳ねながら通路を進んでいる。すると突然電気が消えた。 「なに?」 「どうしたの?」 ゆっくり達がわけがわからずその場で立ち尽くしていると、暗闇の中でなにやら音がした。そして体が急に転が りだす。今まであった床が傾き、坂となりゆっくり達は続々と暗闇の中へ転がっていく。 「ゆっくり止まってね!」 転がるのは止まったが部屋は真っ暗のままだった。ゆっくり達は困惑している。その時おじさんの声が聞こえた。 「さぁ最後の仕上げだよ」 そして電気がついた。 ゆっくり達は驚愕した。ゆっくり達は底が円形の吊るされた檻に入っている。そして下には熱気を発する薄茶色 の液で満たされた大きな入れ物があった。周囲には足場はなく、例え檻から出られたとしても逃げ道はなかった。 「今からゆっくり達が入っている檻の底を端からゆっくりと無くしていくからね。最後に残ったゆっくりは助けて あげてもいいよ」 ゆっくり霊夢はあまりの出来事に呆然としている。その時、 「ゆっくり落ちてね!」 あの好奇心旺盛だったゆっくり魔理沙がゆっくり霊夢に体当たりしたのである。ゆっくり霊夢はなくなった床か ら高温の液体の中へ落ちていった。そして悲鳴が聞こえてくる。 「あづいよぉぉぉぉぉ、だずげで!おでがいじばずぅぅぅぅぅ。」 そして次第に声は小さくなり聞こえなくなった。小さな檻の中で生き残りをかけた戦いが始まった。 初めは十分にあった床はどんどん狭くなり、そしてゆっくり達はどんどん落ちていく。時間がたつにつれて悲鳴 の量は増えていく。 「だづげでおねがい!」 「ゆっぐりできないよ!ゆっぐりでぎないよ!」 「おじさん!やざじいおじさん!お願い!」 ゆっくり達の哀願は届くことはなく次々と力尽きていく。 檻の中のゆっくり霊夢達はすべて落ちてしまった。ゆっくり種というのは頭はさほど良くないのだが、ゆっくり 魔理沙は悪知恵が働くらしく、さまざまな手を使い、たくみにゆっくり霊夢を下に落としていった。 「霊夢うぅぅぅぅ、もっとゆっくりしようよぉぉぉ」 ゆっくり魔理沙は涙を浮かべ霊夢に話しかける、 「魔理沙ぁぁぁ、私もゆっくりぢたいよぉぉぉ」 つられてゆっくり霊夢も涙を流す。そしてゆっくり霊夢が油断した瞬間! 「ゆっくり死んでね!」 ゆっくり霊夢へ体当たりをして穴から下へ落とすのであった。 普段は仲良くしているが、追い詰められると本来の性格が現れるようだ。 このように姑息な手段を用いて檻の中はゆっくり魔理沙だけになった。 そして床はどんどんとなくなっていく。ゆっくり達は気が付く。端から床が無くなるのだから中心にいれば助か ると。こうして檻の中心の取り合いが始まる。 「さっさとどいてね!」 「ゆっくりさせないよ!」 中心を陣取るために体当たりするゆっくり達 「もっとゆっくりさせてね!」 「ゆっく!ゆっく!ゆっくりさせてね!」 中心を死守しようとするゆっくり達 戦いに敗れたゆっくりは絶望の表情に涙を浮かべて下へ落ちてゆき、悲鳴を上げる。 そしてその檻の中は1匹のゆっくり魔理沙だけになった。下からは助けを請うゆっくりの悲鳴が聞こえてくる。 男の声が聞こえる 「どうやら1匹になったようだね。約束通り助けてあげよう。」 床が元に戻り檻の出口が開く。そして開いた檻の先に見える出口らしき場所から床が伸びてくる。 ゆっくり魔理沙は安堵する。 「やっと・・・ゆっくりできる・・・」 しかし伸びてきた床は檻の入り口まで届いていなかった。 「少し距離が足りないようだがそれくらいなら跳べるね、ジャンプして跳び移ってくれるかい?」 ゆっくり魔理沙は見た。檻の出口と床の間は約ゆっくり1匹分。簡単に飛べる距離であった。 ゆっくり魔理沙は最後の力を振り絞って飛んだ!目の前に床が見えた。これでやっとゆっくりできる。そう思っ た瞬間! ガコン 「ゆ!?」 何かに当たったゆっくり魔理沙は表現ができない表情を浮かべ涙を流し落ちていった。そして悲鳴を上げる。 「ゆっぐりぢだがっだよぉぉぉぉぉぉ」 周囲には自分が落としたゆっくり霊夢や魔理沙がプカプカと浮いていた。既に意識はない。それを見てゆっくり 魔理沙はさらに絶望するのであった。 「おじざん、やぐぞくどおりだずげでよぉぉぉ」 ゆっくり魔理沙が悲鳴を上げる、すると男は話し出す。 「残念だったね透明な板が設置してあってどうあがいても飛び越えられないんだよ。まぁいつものことだ、君を助 ける気なんて毛頭なかったんだよ。ゆっくり達を一気に落とすと油の温度が急激に下がってうまく揚げあがらない んでね、だから最後に残ったゆっくりを助けると言ったんだよ。そうすれば争い合ってゆっくりと落ちていくから ね。」 男は説明するがゆっくり魔理沙の意識は既に無くなっていた。 ゆっくり加工場に隣接する饅頭屋には長蛇の列ができている。 「いらっしゃい!いらっしゃい!今日は週に一度のゆっくり揚げ饅頭の販売日だよ!」 幻想郷の住民の間では今ゆっくり揚げ饅頭は一大ブームとなっている。 その列を見た金髪の女性は並んでいる住民にこの列はいったい何なのか尋ねた。 「おやまぁ、お嬢さん。ゆっくり揚げ饅頭を知らないのかい?」 「ゆっくり揚げ饅頭?」 「そうさ、そこの饅頭屋で売ってるんだ。見た目は少々アレだが味は抜群だよ。」 金髪の女性は試しに買ってみることにした。 一時間並びようやく買うことができた。 「ふぅ、やっと買えたわ。これでまずかったらあの饅頭屋ただじゃおかないわ」 一口ほおばる、 「こ、これは!」 おいしい、確かに並んで買うだけのことはあるとその女性は思った。 「あら?」 その饅頭をよく見ると、どこかで見たことがある顔がうっすらと見える。 そう、この恐怖におびえる顔はまさしく家で透明な箱に閉じ込めてあるゆっくり魔理沙であった。 「もし?この揚げ饅頭はあの饅頭屋で作っているんですか?」 自分と同じように揚げ饅頭を買った人間に聞いた。 「いんや、なんでもあの饅頭屋に隣接する工場で作っているらしいよ。まぁ作り方までは知らないがね。」 「どうもありがとうございます。」 家路に付く途中、その女性は独り言をつぶやいた。 「うふふふふ、いいこと聞いたわ」 金髪の女性は不敵な笑みを浮かべ森の中へ消えていった。 End 作成者:ロウ 後書き 最後まで読んでいただきありがとうございます。 前作の“ゆっくり霊夢の生涯”で生き別れたプチゆっくりたちの結末を書かせていただきました。 もう気が付いている方もいらっしゃるかもしれませんが、今回のSSは宮沢賢治の注文の多い料理店をモチーフに 作成いたしました。まぁモチーフと違い料理されて食べられてしまうんですけどね^^;。 東方のキャラが0人というのは寂しかったので、勝手ながらアリスがゆっくり加工場の存在を知った時という設定 を入れさせていただきました。 作成するに当たり、改めて加工場を書いた方がいかに神がかっているかを痛感いたしました。 とりあえず頭の中に浮かんだネタは一通り出し切りました。 アイデアさえ浮かべば次回作を書きたいと思います。と言いながらも文章を推敲している間に紅魔館を舞台にした ゆっくりいぢめがなんとなく頭の中に浮かんできてしまいました。(もう病気ですねw) 私のような初心者が書いたSSでも読みたい!という人が一人でもいるならゆっくりですが書きたいと思います。 個人的には漫画を描きたいのですが、幼少の頃から画力が絶望的なのであきらめています;; 念のためゆっくり達が入った部屋の説明をしておきますね。 洗浄 → 乾燥 → 小麦粉まぶし → とき卵づけ → 揚げ ちなみにSSの通りに揚げ饅頭を作ってもおいしく出来上がるかは一切責任を持ちませんのであしからず。
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ゆっくりできない四畳半 住宅街から少し離れた河川敷の橋の下。 そこに一匹の身重のれいむが居た。 ゆらゆらと体を揺らしながら幸せそうな顔で歌を歌っている。 「ゆ~ん♪ゆ~ん♪」 周りの草花もれいむに合わせて踊っているかの様に風に揺れる。 その柔らかな風がれいむの頬を撫でた。 すぐ側を流れる川が太陽の光を反射してキラキラとれいむを照らす。 顔をあげて空をゆっくりと流れていく雲を眺めてれいむがにっこりと微笑んだ。 「ゆ~っ!とってもゆっくりできるねっ!」 れいむは群の幼馴染のまりさと番になった。 元々住んでいたゆっくりプレイスはあまり餌が豊富でなかった為に子供を作る事ができなかった。 そこで2匹は群を離れて山から下り、この河川敷に移り住んだのであった。 最初は元のプレイスを出て新たな環境での生活に不安を感じていたが、 草むらに住む豊富な食料や雨風を凌げるホームレスが捨てた家は、 2匹に以前のプレイスよりも裕福なゆっくりライフを提供をしてくれた。 群の仲間からゆっくりを見つけると襲い掛かってくると聞かされていた人間も 「ゆっくりしていってね!」と元気に挨拶をすれば気さくに返事を返してくれた。 きっと無断で人間のゆっくりプレイスに入り込んで、悪さをしたゆっくりの戯言だったのだろう。 そんな事をしたら怒るのはゆっくりでも同じである。 れいむは今までのゆん生の中で最も幸せを感じていた。最もゆっくりしていた。満たされていた。 そう、次の瞬間までは 「ゆっくりにげるよっ!こっちこないでねっ!あっちいってねっ!」 遠くからぽいんぽいん!と草むらを跳ねてくる丸い影。 あの三角帽子のシルエットはれいむの番のまりさである。 しかしまりさの様子が何やらおかしい。 全身から汗を垂れ流して息を荒げながら必死の形相でこちらに叫んでいる。 「ゆっくりかくれてねっ!れいむ!ゆっくりかくれてねぇぇ!」 まりさの取り乱した声をゆっくりと聞いたれいむは顔を強張らせる。 群で一番ゆっくりしていたまりさとは思えない焦りようからも事態の深刻さが伺えた。 「ゆゆっ!れいむはゆっくりかくれるよ!」 れいむはビールケースとビニールシートでできたゆっくりプレイスの影に身を潜める。 れいむがゆっくりと身を隠した事を確認すると まりさは身をひるがえしてあさっての方向にその進路を変えた。 「ゆっくりまがるよ!まりさはこっちへ逃げるよ!あっちにはいかないでね!」 時折後ろを振り返りながら大声で叫ぶまりさ。 恐怖で震えるまりさの視線の先には、まりさとは比べ物にならない程の大きなシルエット。 それは人間だった。 まりさは人間がゆっくりプレイスへ近づかないように誘導していたのだ。 しかし人間は必死に声を張り上げるまりさの方へは向かわずに真っ直ぐにれいむの居る方へ進む。 その様子を見てまりさは驚きの表情を浮かべて立ち止まった。 「ゆっ!なにしてるの!まりさはここだよ!かわいくてごめんね!」 まりさの呼びかけを無視してれいむの居る方向へ歩みを進める人間。 まりさはオロオロと取り乱した顔をしながら人間を追いかける。 「ゆっ!ゆっ!やめてねっ!そっちにはなにもないからねっ!ゆっくりやめてねっ!」 目に涙を溜めながら人間と併走して叫ぶまりさ。 まりさを無視して歩みを進める人間はれいむとまりさのゆっくりプレイスの前で足を止めた。 プレイスの影からそっとを身を乗り出して人間の様子を伺うれいむ。 「ゆっ・・・!ゆゆっ?」 れいむは人間の顔を見て僅かに安堵した。 人間の表情には怒りとか悲しみといった負の要素は感じられなかった。 むしろゆっくり的にはゆっくりしていると感じた。 まりさが不注意で人間の家に迷い込んで粗相をしてしまったのかも知れない。 自分達は人間に危害をくわえるつもりが無い事を伝えればわかってくれる筈だ。 そして理由を聞いてこちらに比があればゆっくりと謝罪しよう。 れいむはそう思ってプレイスの影から一歩足を踏み出した。 恐怖に引きつった顔を引き締めて精一杯の笑顔を浮かべる。 「ゆっ♪にんげ」 次の瞬間、雨さんや風さんがどんなに機嫌が悪くても微動だにしなかった れいむとまりさ自慢のゆっくりプレイスが粉々に砕けながら上空に舞い上がった。 吹き飛ぶビールケースに体をぶつけたれいむが草むらを転がる。 「ゆ゛っ!ゆっくりっ?ゆっくりぃっ!?」 雨の様に降り注ぐプレイスの破片。 まりさが産まれてくる子供たちの為にせっせと集めていた餌が地面に落ちて音を立てて散らばる。 体を掠めて地面に突き刺さるビールケースに驚いてれいむは「ゆぴぃ!」と声をあげて地面に縋り付いた。 体を縮こませながら小さく震え、目を見開いて崩壊していくプレイスをただ見つめる事しかできなかった。 崩れたプレイスの奥から顔を除かせる足を振り上げた人間。 2匹の自慢のゆっくりプレイスは人間が足を振り上げただけでいとも容易く崩壊してしまったのだった。 「どうじでごんなごどするのぉぉぉ!あやまってねっ!ゆっくりあやまってねっ!」 まりさが人間の足に体当たりしながら涙を撒き散らして叫ぶ。 しかし相手がゆっくりならば一撃で昏倒してしまう程の勢いで 体当たりを続けているのにも関わらず人間は微動だにしない。 逆に人間の脛の辺りに体当たりをしてしまい、その硬さと痛みにまりさの動きが止まる。 「あ゛や゛ばっ・・・・ゆっくりい゛だい゛っ!!」 ズルズルと滑り落ちて人間の足にもたれかかるまりさ。しかし弱みを見せるわけにはいかなかった。 歯を食いしばって涙がこぼれるのをグッと堪える。番のれいむの前で情けない姿を見せるわけにはいかない。 まりさがキッ!と人間を睨みあげる。 まりさから見た人間はまるで巨大な塔の様に聳え立ち、その視線はれいむの方へ向いていたが、 ギョロリとまりさを見下ろす。海底の沈殿物の様な黒い両眼。まりさと人間の目が合う。 ゆっくりにとっては遥か上空から見下ろすその眼にまりさは思わず身を振るわせる。 「ゆぴぃ!!」 数秒前の決意も空しく涙を垂れ流しながらのけぞるまりさ。 そんなまりさの頭を人間が鷲づかみにして持ち上げた。 スーッ!と天へ登っていくまりさ。その視点の高さに血の気ならぬ餡子の気が引いていく。 「ゆぅぅぅ!!たかいぃぃ!!ゆっくりたかいぃぃ!!まるでおそろろらろっ!?」 本能的に「まるでお空を飛んでるみたい」と口にしようとしたが、恐怖の余りそれさえもままならない。 まりさには広大なサバンナの様に感じていた草むらがジオラマの様に一望できる。 その光景にまりさは下腹部がキュッと縮こまるような妙な感覚が走った。 これが人間の視点だった。勝てない。勝てるわけが無い。まりさの心は容易く折れてしまった。 降参の合図の様にまりさのしーしーの穴が膨れ上がりジョロジョロと甘味を帯びた水が地面にこぼれ落ちた。 自分の体からだらしなく排出されるしーしーを見てまりさが頬を赤らめながら涙をポロポロと零した。 「ゆ゛っ!みないでねっ!みないでねっ!」 人間とれいむに向かって涙交じりの声を張り上げるまりさ。 これから赤ゆっくりを設けて一家の大黒柱になる筈だったまりさの痴態を見て 地面に張り付いて事の成り行きを見守っていたれいむが「うゅゅ」とすすり泣く。 人間は表情を変えることも無く、まりさの顔をつまらなそうに眺め続けた。 「やべでねっ!もうおろしてねっ!ゆぅっ!!ゆっぐりざぜでぇぇぇぇ!」 人間の手から逃れようと「じたじた」と身を震わすまりさだったが、 最後の一滴がこぼれ落ちるまで人間の視線はまりさに注がれ続けた。 しーしーを出しつくして屈辱に塗れた表情でグッタリとうな垂れるまりさ。 人間はまりさのお飾りである帽子を奪い取ると無造作に地面に投げ捨てた。 涙も枯れ果てて真っ赤になったまりさの目が見開かれる。 「ゆぅ!!なにしてるのぉっ!やめてねっ!まりさのお帽・・・じッ!!!」 声を張り上げようとしたまりさの顔面に人間の平手がめり込んだ。 ビリビリとした衝撃がまりさの中を駆け巡る。 今までのゆん生の中で経験した事の無い激痛。 痛い。怖い。ゆっくりできない。人間さんはゆっくりできない。 かえりたい。森にかえりたい。怖い。とにかく怖い。 「ゆ゛っ!・・・ぐっゆっ・・・!」 目をギュッと閉じてガタガタと身を震わせるまりさ。 人間はそんなまりさに気をかける事も無く、 まりさのおさげを解いて髪をパイナップルの様にまとめるとリボンできつく縛った。 「ゆ゛ぅぅぅぅ・・・!やべでぇぇぇ・・・!やべでねぇぇぇ・・・!」 涙で汚れた顔を更にグシャグシャにして力なく声を絞り出すまりさ。 しかしその声はピタリと止まった。 男の手に握られているのはライター。 その先から噴出する火を見てまりさが顔を強張らせる。 「ゆ゛っ!や、やめてねっ!あついあついはゆっくりできないよっ!」 「やべでねっ!まりさをゆっくりさせてあげてねっ!」 草むらに身を潜めていたれいむも人間の足に身を擦り付けて懇願を始める。 ライターの火から身を捻って体を遠ざけるまりさ。 しかし男の手に握られたまりさの体はこれ以上ライターの火から逃れる事はできない。 徐々にまりさの体に近づいていく炎。その熱にまりさは顔を歪める。 「ゆ゛っ・・・ゆゆっ!ごべんなざいぃぃ!よくわからないけどごべんなざいぃぃ!」 まりさはどうして今こんな事になっているのかわからなかった。 まりさの狩りをジッと見つめていたこの人間に元気良く挨拶をしただけである。 それなのに何故こんな事になっているのだろうか? わからない。わからなかった。しかしそれでもまりさは涙を流しながら必死に人間に謝罪した。 謝罪し続けるしかなかった。人間の気が変わって解放される事を祈るしかなかった。 「ごべんなざいぃぃぃ!ごべ・・・っゆ゛あ゛あ゛あ゛っ!!?」 まりさの謝罪は受け入れられなかった。 ライターの火はパイナップルのようにまとめられたまりさの毛先に引火した。 まりさの髪の毛がチリチリと炎に焼かれて煙をあげる。 「ゆ゛あ゛っ!ゆ゛っぐり゛!!ゆ゛っぐり゛ぃぃぃ!!」 男の手から開放されて地面を転がるまりさ。 草むらに頭を押し付けて火を消そうともがいたが、火の勢いは収まらない。 まりさの頭部に凄まじい熱気と餡子を抉るような鈍い痛みが伝わってくる。 「れいむ!だずげでえええ!ばやぐだずげでねぇぇぇ!」 「まりざぁぁぁぁ!まりざぁぁぁぁ!」 まりさがのたうちまわりながられいむの元を目指して転がる。 れいむはまりさに駆け寄って炎を消そうと舌をまりさの頭に近づけるが 炎に触れる前に煙が立ち上りグニャリと舌先が変形した。 「ゆ゛ぎゅっ!」 少し遅れて伝わってきた激痛にれいむは思わず地面に倒れこむ。 触っても居ないのにこの痛さ。頭を炎で焼かれているまりさの痛みは計り知れない。 まりさは目をこぼれ落ちる程に見開いて耳を劈くような奇声をあげながら地面に頭を叩きつけている。 このままではまりさが二度とゆっくりできなくなってしまう。 幼い頃から一緒に遊んで、歌って、狩りをしたまりさが居なくなってしまう。 れいむにとってまりさの居ないゆん生など考えられなかった。 「まりさぁぁぁ!お水さんだよぉぉぉぉ!ゆっくりしないでお水さんに飛び込んでねぇぇぇぇ!」 「ゆ゛あ゛あ゛っ!おびず!!お゛びずざん゛ん゛!!!」 まりさはギリッと歯を食いしばりながら身を翻して 川に向かってばすんばすん!と火の粉を撒き散らしながら弾んでいった。 「おーい、まりさ」 「ゆ゛っ!!!」 川まであと数歩の所で人間がまりさに声をかけた。 血走った目で川へ向かって飛び跳ねながら人間の方へ視線を向けるまりさ。 その人間を見たまりさの足が思わず止まる。 「ゆっくり戻ってね」 人間の手に握られたのはまりさの命と同じくらい大事な帽子。 その帽子には先程のライターがあてがわれている。 「ゆ゛っ!!な゛に゛じで!?な゛に゛じでぇぇぇぇぇぇぇ!?」 形相を浮かべながら川を流れる水と人間の握った帽子を何度も交互に見つめるまりさ。 早く水に入らないとゆっくりできない。でも帽子を焼かれたらゆっくりできない。 頭の上では熱くて痛い塊がバチバチと唸りを上げている。 まりさの体が自然に川へと向かって擦り寄った。 「ゆっくり戻れ」 先程より冷たく重い人間の声。まりさの動きがピタリと止まる。 戻って帽子を返して貰わないといけない。でも水に入らないとゆっくりできない。 しかし火を消しても帽子が無いと一生ゆっくりする事はできない。 でもまず水だ!しかしその前に帽子を!でもこのままだと!しかし!でも!しかし! 帽子!水!ゆっくり!帽子!水!ゆっくり!帽子!水!ゆっ・・・ プツッ! 答えを導き出す事無く、まりさの命は時間切れになった。 熱がまりさの泡だった頭皮を溶かして破き、鈍い音と共に噴水の様に餡子がビュルビュルと噴出した。 「びばっ!ばっ!ばばばばばっ!」 一瞬にしてゆっくりの生命を維持する餡子の大半を失って痙攣をはじめるまりさ。 噴出した餡子によって火は消えたが、それと同時に命の灯火も消えてしまった。 ぶるんぶるんと操り人形の様に身を揺らすまりさを見てれいむが叫び声をあげた。 「まりざぁぁぁぁ!まりざぁぁぁぁぁ!ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 「狩りにいってくるねっ!」と何時ものように元気な微笑みを浮かべて草むらへ跳ねていったまりさが 今は目の前で白目を剥いてだらしなく舌を垂れ流して痙攣しながら餡子を撒き散らしている。 どうしてこんなことに。まりさはついさっきまであんなにゆっくりしていたのに。 「どぼじでええええ!どぼじでえええええ!」 れいむは痙攣をやめて崩れ落ちるように地面に倒れこんだまりさの元へフラフラと向かう。 しかしその歩みはたった数歩で止まった。 激しい下腹部の痛み。 まだ赤ゆっくりを出産する時期では無かったが、 まりさの死に直面したショックで本能的に子孫を残すべくれいむが産気ずいた。 「う゛っ!うばれ゛る゛ぅぅぅぅぅ!」 歯茎を剥き出しながらギリギリと歯を鳴らして 涎と汗をダラダラと垂れ流しながられいむは丘に打ち上げられたトドの様に地面に横たわる。 その光景を醒めた目で眺める人間。 「ゆっぐりじでいっでね!おぢびちゃん!お外はゆっぐりできないよぉぉぉっ!」 必死に産まれ落ちようとしている赤ゆっくりに語りかけるれいむ。 気がつくと人間はれいむの傍らに膝を曲げて腰を下ろしていた。 まりさをあんなにもゆっくりできない方法で嬲り殺しにしたというのにも関わらず全く悪びれない表情。 こんな事をしたのに午後までゆっくりと寝過ごしてしまったかの様なとぼけた顔。 れいむのゆん生の中で湧き上がったことの無い煮えたぎる様な怒りの感情。 その「ゆっくり」とは間逆の感情を抑えることが出来ずに れいむはクワッ!と目を見開いて人間を睨みつけると狂ったように叫んだ。 「じねぇぇぇぇ!ゆ゛っぐり゛ごろじはぞぐざにじね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!」 首を振り回して唾を撒き散らしながら大口を開けて人間を罵倒するれいむ。 しかしそれでも人間の表情は変わらない。 人間は地面に落ちている石を拾い上げてれいむのまむまむに宛がうと れいむを蹴り飛ばした。 「んぎゅんッ!」 強引にまむまむに蓋をされて出産を阻止された。 ぷるんぷるんと体を波打たせながられいむが地面を弾む。 コロコロと地面を転がり仰向けになった所でようやくれいむの体が止まった。 全身を駆け巡る激痛に白目を剥いて痙攣するれいむ。 その視線の先には先程と変わらないゆっくりと流れる雲。 れいむがこんなにもゆっくりしていないのに、雲さんは何をそんなにもゆっくりしているのだろう。 憎々しげな視線を空に向けていたれいむだったが、その視線が人間によって遮られる。 れいむの視界が人間の振り上げた足で一杯になった瞬間、その意識はプツリと途切れた。 それから数日後 薄暗い廊下を進む男。 男の足音と時計の針が時間を刻む音だけが辺りに響く。男が立ち止まった先には固く閉ざされた扉。 そこは未整理の品々が乱雑に置かれた物置だった。その一角のクローゼットに男は手をかける。 ギィ 木材の軋む音。開かれたクローゼットの中は空っぽだった。 物が何も置いて無いという意味ではない。本当に何も無かった。 ただの空洞。トンネルの様にただそこに置かれているだけだった。 目の前には再び扉。クローゼットはこの扉を隠す為だけに存在していた。 男はポケットから鍵を取り出し、その隠し扉の南京錠にそれを差し込んで扉を開いた。 中は四畳半ほどの狭い空間。 部屋の脇の棚にはうず高く積まれた水槽。その水槽の中には無数のゆっくり達が蠢いていた。 ゆっくりすることを信条としてゆっくりできる者ほど優れた個体とされるゆっくり達だったが、 ここに居るゆっくり達の表情はおおよそ「ゆっくり」などという単語とはかけ離れていた。 虚ろな目で薄笑いを浮かべて虚空に目を泳がすだけのゆっくり。 ひたすら痙攣を繰り返し時折耳を劈くような奇声を上げるゆっくり。 息絶えた親ゆっくりの体に無数に埋め込まれた狂ったように泣き叫ぶ赤ゆっくり達。 延々とすっきりを行い頭から生える実ゆっくりを奪い合うように喰らう番のゆっくり。 すべて男の仕業だった。 自然に住む野生のゆっくり、街に住む野良ゆっくり、誰かに飼われていたであろう飼いゆっくり。 それらを見境無くここに連れ込んで虐待と更なる虐待の為の治療を繰り返した。 多くのゆっくりは命を落としたが、 その前に精神を病んで奇行に走り出したゆっくりを棚に並ぶ水槽に入れて延命させた。 それが男の今のコレクションである。 それには何の意味も無かった。飽きればゴミのようにそれを捨てるだろう。 部屋の真ん中の作業台の上に置いてある透明な箱の中にまだ精神を病んでいないゆっくりの親子が居た。 数日前に番のまりさを殺されて、ここに連れて来られたれいむとその赤ゆっくり達だ。 棚に陳列された精神を破壊されたゆっくり達の視線に怯えながらこの薄暗い部屋の透明な箱の中で れいむは7匹の赤ゆっくりを出産した。れいむ種が5匹、まりさ種が2匹。 この8匹のゆっくり達はこれから数時間で死ぬか、棚の水槽で死んだように生き続ける事になるだけの存在。 少なくともこの時点では、このゆっくりの親子達には逃れられない2つの運命が待つのみだった。 「い゛っい゛や゛じゃぁぁぁ!!ばなじでにぇぇぇぇ!!」 もみあげをパタパタと振りながら赤れいむが身をよじって男の手の中で暴れる。 男は手のひらの赤れいむを人差し指と親指で摘み上げると潰れる限界までその体を押し潰した。 赤れいむの動きはピタリと止まり顔を真っ赤にして涙を零しながら小さく呻き声をあげる。 「んぎゅ・・・・!んぎゅぅぅぅぅぅ・・・・!!」 「やべでええええ!やべでね!おちびちゃんはいやがっでるよぉぉぉ!」 透明な壁に顔を押し付けて号泣する親れいむ。 男は空いた片方の手を机に滑らせると一本の針を取り出した。 その先端を赤れいむに突きつける。 顔を真っ赤にしながら圧力に耐える赤れいむの顔が更に醜く歪む。 「やべちぃぇぇぇ!ゆっぐちちゃちぇてぇぇぇぇ!」 「ゆっくりさせてぇぇぇ!おちびちゃんをがえじでぇぇぇ!」 水槽の中から嗚咽を漏らす親れいむ。 それにしがみ付いてブルブルと身を震わせる赤ゆっくり達。 男はそれをつまらなそうな目で見下ろした。 男にとってそれは腐るほど見た光景だった。心底どうでもいい光景だった。 芸の無いテンプレートな台詞に苛立ちを覚える程であった。 男が小さくため息を吐いた。 身重だったかられいむ種の方を選んだが、やはりまりさ種を持ってくるべきだった。 れいむ種はつまらない。殆どのれいむ種は虐待を前にして泣き喚くだけである。 この状況を打開しようとする意思が無い。その点まりさ種は違う。反応が多彩だ。 子を捨てて逃げ出す者。子を差し出す代わりに自分を見逃して欲しいと懇願する者。 自分の身を差し出す代わりに子を見逃して欲しいと懇願する者。 なんとかこちら側に入ろうと画策する者。その反応は多岐にわたる。 「返してやろう」 男は針を床に投げ捨て、果物ナイフを手に取ると淀みない動作で赤れいむの頭部を切り開いて 小指で中の餡子をクルリとひとかきすると頭部を閉じてオレンジジュースが入った小皿に 赤れいむを軽く浸して傷を塞ぎ、箱の中に赤れいむを投げ入れた。 親れいむにはこの一瞬の動作を認識することができずに、赤れいむは無傷で返されたと思った。 目を輝かせながら転がる赤れいむに擦り寄ると、涙を零しながら満面の笑顔を浮かべた。 「ゆっ!おちびちゃん!よかったね!ゆっくりしようね!」 「ゆっ?ゆっ?ゆっ?ゆっ?」 しかし赤れいむは箱の中でころころと転がり続ける。 他の赤ゆっくりや壁にぶつかってもその動きを止めない。 「ゆぅ!?どぼじだの!?おちびちゃん!ゆっくりしようねっ!」 「ゆ゛っ!あばっ!ばばばっ!ばひっ!」 男の手によって中身の餡子をかき混ぜられた赤れいむは 思考を司り、体の動きをコントロールする中枢餡が破壊された為に体は動いているが、 既に死亡していた。 そして姉妹のゆっくり達を払いのけて狂ったように透明な壁に何度も体を叩きつけていたが、 突然赤ゆっくりらしからぬ無駄に立派なぺにぺにをそそり立たせると 「へひっ!ゆ゛っ!しゅっ!しゅしゅっ!しゅきりぃぃぃぃ!!」 と焦点の合わない目を輝かせながら絶叫するとぺにぺにから餡子を噴出させた。 そのまま仰け反るように倒れこみ噴出させた餡子を全身に浴びる。 「しゅっきり!!しゅっきり!!しゅっきり!!しゅっ!しゅっ!しゅっ!しゅっ!」 体の餡子を出し尽くした後も満面の笑顔で痙攣しながら悶えていた赤れいむだったが、 突然この世の終わりのような苦悶の表情を浮かべた途端、 親れいむから4番目に産まれた赤ゆっくり、四女れいむは動かなくなった。 四女れいむの奇行に身を震わせて親れいむの後ろに隠れてフルフルと身を震わせる赤ゆっくり達。 親れいむも歯をガチガチと鳴らしながらその光景を呆然と見ていた。 「なにごれぇぇぇぇ!」 「ゆっぐりできないぃぃぃぃぃ」 「きょわいよぉぉぉ!」 「だしゅげでえええええ」 そんなゆっくり達の様子を詰まらなそう見ていた男が口を開く。 「腹が減った。お前らの中から3匹差し出せ、食べるから」 「ゆ゛っ!!!」 その言葉に親ゆっくりは目を見開く。 そして顔を強張らせながら男を見上げて恐る恐る口を開いた。 「ぞっ・・・ぞんなのえらべるばけ」 「全員食べてもいいんだぞ」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 男から放たれた冷たい一言。 れいむは歯茎を剥き出して叫んだ。もう叫ぶくらいしかできなかった。 男の手に渡ったおちびちゃんがあんな事になったのだ。 差し出せる訳がない。しかも食べると言っているのだ。 選べない。全員かわいいれいむのおちびちゃんだ。 選べる筈が無い。しかしだ。選ばなければ全員が食べられる。 選ばないといけない。選ばなければ。誰だ。いらない奴は誰だ。 れいむの餡子脳がグルグルと無駄な回転を始めた。 視線を下に移すと赤ゆっくり達が身を摺り寄せながらプルプルと震えている。 親れいむにすがりつきながらもその目には微かな不信感が伺える。 まさか、まさかとは思うが自分が選ばれるのでは無いかという不信感。 選ばない!選ぶわけがない!そんな顔でこっちを見ないで!ゆっくり!ゆっくりできない! 答えなど出ない。視界が歪んで餡子が口から出そうになるだけだった。 いらない子など居ない。しかし選ばないと。いらない子など居ない。しかし・・・ れいむの餡子脳が無限にループを始めた。れいむの心は何故か楽しくなってきた。 こんな状況なのにれいむの心がゆっくりしはじめた。わからない。ただただわからなかった。 れいむの思考が行き場を失って安全地帯である「ゆっくり」に逃げ込んだのだ。 「ゆっ!まりさがいくのじぇl」 親れいむの泥沼に陥った思考を断ち切るかのように 三女の赤まりさがぽいん!と一歩前にでた。親れいむが驚いた表情で三女まりさを見る。 目には涙を溜めてガタガタと震えていたが、その瞳の奥には確固たる意思を感じた。 その目を見た親れいむはギリギリのところで精神の崩壊を免れた。 それは数日前まで一緒に暮らしていた幼馴染の番のまりさの目だった。 「おねぇちゃん!いもうちょを一緒に守ろうにぇ!」 「ゆ゛っ!!」 「どぼじで!?」 三女まりさの視線の先には長女れいむと次女れいむ。 2匹はクワッ!と目を見開いて驚きの表情を浮かべた。 何故こんな時にそんな事をいうの?バカなの?死ぬの?英雄気取りなの? 2匹は見事にシンクロした動きで口をパクパクさせながら首をフルフルと振り回す。 そんな3匹を交互に見ながらオロオロと取り乱す親れいむ。 「決まったようだな」 面倒くさそうにゆっくり達の三文芝居を見ていた男が箱の蓋をあけて手を伸ばす。 それに噛み付くようにしてくっつく三女まりさ。 一方、長女れいむと次女れいむは涙を撒き散らしながら箱の中を飛び回った。 「がっでにばなじをちゅちゅめにゃいでにぇぇぇぇ!」 「のーきゃん!のーきゃんだからにぇぇぇぇ!」 他の赤ゆっくりを突き飛ばしながら逃げまとう2匹。 男はそんな長女れいむを人差し指で押しつぶした。 「あっちいっちぇ・・・・・・ん゛ぎゅぶばッ!」 プパッ!と餡子と砕けた歯を撒き散らす長女れいむ。 パタタタタ!ともみあげを床に叩きつけて暴れるがそんなものでは男の指から逃れる事はできない。 徐々に長女れいむを押し付ける力が強くなる。 長女れいむは「げっ!げっ!」と変な声を漏らしながら悶絶した。 「ゆぴぇっ!ゆ゛っぐち゛ぃぃぃ!ゆ゛っぐぢぃぃぃ!!」 それを見た次女れいむはしーしーをぷしゃー!と霧吹きの様に垂れ流すとピタリと逃げるのを止めて 汗を垂らしながら死にそうな顔で微笑むと「ゆっくりのるね」と男の手に飛び移った。 男の手に齧り付く三女まりさ、餡子を吐きながら痙攣する長女れいむ、 目を丸めて呆然とする次女れいむを乗せた男の手が静かに箱の中から出て行った。 「洗って禿饅頭にしてから喰うか」 そう呟いて踵を返した男。 それが男の最後の言葉だった。 ガシャン! 作業台に乗った小物を撒き散らしながら男が膝から崩れるように倒れた。 男は胸を病に侵されていた。 医師は男に病状を伝える家族が存在しない事がわかると直接男に告知した。 淡々とそれを聞かされた男は残された時間で何かを成すべく奮起する事もなく、 かと言って残された時間を静かに有意義に使う事もなく、 目に付いた幸せそうなゆっくりをさらって虐殺をはじめた。 輝く未来に胸を躍らせるゆっくり達を蹂躙して弄ぶ事によって現状から逃避した。 男にはそれが楽しくて楽しくて仕方がなかった。 楽しすぎて残された時間がもう0になりつつあることも忘れてしまっていた。 後悔はあった。やり残した事は両手では数え切れない程あった。 しかし手からこぼれ落ちた3匹の赤ゆっくりと それを箱から形相を浮かべて見ているゆっくり達。 こいつらの末路を想像すると途端に楽しくなってきた。 自らの手を下さずに自然と崩壊していくゆっくりの親子。これは面白いかもしれない。 無表情だった男の顔に久方ぶりの笑みが浮ぶ。 その横をゆっくりとは思えない速さでぱしんぱしん!と弾む長女れいむが通り過ぎた。 目を血走らせて必死の形相を浮かべながら一心不乱に扉の外を目指す。 親も姉妹も見捨てて本能的にゆっくりできない場所からの逃走・・・。 本能的?どうだろうか?この糞袋は産まれて早々にゲスの才能を開花させたのかも知れない。 分厚い扉の隙間を抜けて長女れいむが四畳半の部屋を抜け出す。 恐怖に引きつった顔がコロリと笑顔に変わる。 「ゆゆん♪おそとに」 (でられないよ) 扉の隙間から手が伸びて長女れいむを捕らえた。 檻の様に5本の指が長女れいむの周りに突き刺さる。 「ゆぴぇっ!どいちぇにぇ!どいちぇにぇぇぇ!」 指の間に体を押し付けて尻を振って脱出をはかる長女れいむ。 男の指先に濡れた感触と弱々しい長女れいむの力が伝わってくる。 えぐえぐと嗚咽しながら長女れいむが耳障りな甲高い声で叫ぶ。 「どいちぇぇぇぇ!どげぇぇぇぇ!じじいいいいぃぃl!」 男は腕を手繰り寄せて後方へ振り下ろした。 指の牢獄が床を滑る。 指の間から醜く顔をはみ出しながら長女れいむも床を滑った。 再びゆっくりできない部屋に引きずり込まれる。遠ざかっていく扉の隙間。 まるで底の無い落とし穴に突き落とされるような感覚。長女れいむの表情が恐怖に歪んだ。 「ゆ゛ん゛や゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!」 それと同時に長女れいむの足元に焼けるような痛み。 床との摩擦で長女れいむの体が擦り切れていった。 餡子を撒き散らしながら床を転がる長女れいむ。 男は最後の力を振り絞って立ち上がり、 倒れこむようにして四畳半の部屋から出ると扉を蹴り飛ばして閉じた。 中の音はもう一切聞こえない。 あの耳障りな奇声と嗚咽が嘘のように静まり返る室内。 時計の針が時間を刻む音だけが部屋の中に響く。 その微かな音も男の耳にはもう届いていなかった。 男は満足気な表情を浮かべると眠るように目を閉じて動かなくなった。 「じねぇぇぇぇ!じねぇぇぇぇぇ!ゆっぐちじねぇぇぇぇ!」 餡子を滴らせながら固く閉ざされてしまった扉に向かって 呪いの言葉を吐き続ける長女れいむ。その言葉は男にはもう絶対に届かない。 「ゆひゅーゆひゅー」と息を切らせながら天を仰ぐ長女れいむ。 赤ゆっくりにとっては遥か上空に佇む棚に並ぶ水槽の中の 「目」しかないつるつるの丸いゆっくりと長女れいむの目が合う。 (・・・ゆっくりしていってね) 「ゆ゛っ!!!」 突如聞こえた聞こえるはずの無いその声に長女れいむは 歯を剥き出して驚きの表情を浮かべてその場で飛び上がった。 そして着地した時の湿った音で自分の中身が取り返しのつかないほど 流れ出してしまった事に気がついて目に一杯の涙を浮かべた。 つづく ※ついに名前を貰ったよ!代表作が「お○んぽ大好き!みょんの大自然丸かじり」とかだったら 「お○んぽ丸かじりの人」とかになってたんだね!わかるよ!わからないよ! 今まで書いたもの ゆっくり見せしめ ゆっくり電柱 ゆっくり脳内補完 副工場長れいむの末路 ゲスの見た夢 元野良れいむの里帰り ゆっくりできない四畳半 このSSに感想をつける
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ある男が居た。 まじめで、明るく皆から頼りにされる男だった。 そんな男は、洪水で氾濫しそうな川に土嚢を敷いている最中に川に流されて死んだ。 危険な箇所、誰も行きたくない箇所の作業での事故。 まさに、その男の生き様を象徴するような事故だった。 ……その男が残したレポートがある。 数冊にまとめられたそのレポートは、幻想郷に住まうある物体の観察を記したものだった。 その物体の種族名はゆっくり。 幻想郷で家・畑問わず荒らしまわっている害蟲である。 そのゆっくりについて書かれたレポートの、最初の観察を読んでみることにする。 今日から、ゆっくりについての観察したデータをまとめる事にする。。 記録などした事がないので、日記のようにまとめていこうと思う。 その日は長かった残暑もひと段落し、逆に暖房が欲しいほど冷えた10月の初め。 今日は近くの森からゆっくり霊夢の一家を家に連れてきた。 聞けば、何日か前に散歩から帰ると、魔理沙種に家を取られておりその日から何も食べていないらしい。 なるほど、近くの洞穴を見るとゆっくり魔理沙一家が元気よく過ごしていた。 これまた、ほのぼのする様な一家の光景だ。 「おじさんの家でゆっくりしないかい?」 籠から大きな肉まんを差し出しながら一家に提案した。 これだけで良い。 肉まんの足の先から羽に至るまで数分で食べつくしたゆっくり霊夢一家は、先程とは打って変わって、ワイワイと自分の後ろをついて来た。 「ゆっくりできるね!」 「おいしいものもたくさんたべれるね」 賑やかに後ろをついてくるゆっくり一家。 少ないが、食べ物を口に入れたことで少しは元気が出たのだろう。 「ここがおじさんの家だよ」 「ゆ! おおきいね!」 「おじさんのおうち、とってもおおきいね!」 ご機嫌を取ろうと、口々にお世辞の言葉を話すゆっくり達。 さすがに家のものを壊されちゃかなわないので、早々に庭の離れへと連れて行く。 離れは、和風建築の家には珍しく入り口は引き戸になっている。 その中は和風そのもの、違う点といえば珍しい石油ストーブが置いてあることだ。 珍しいものを見たからだろう、興味津々でその周りに集まるゆっくり一家。 「ゆゆっ! あったかい! おじさんこれあったかいよ」 「なつみたいだね!」 「それはストーブって言って、部屋を暖かくするものだよ。あんまり近づくと火傷するから気を付けてね」 放っておいて、そのままダイブしたら危ないので注意する。 直ぐに全員に伝わったらしく、はぁーいの大合唱が返ってきた。 「寒かっただろ、暫くここで過ごせばいいよ。外に出たかったら言ってくれれば何時でも出してあげるから」 「おじさんありがとう! ゆっくりするよ」 信用されたのか、あちらこちらに散らばっていたゆっくり達も、ゆっくりするよと声をかけてきた。 一家で散歩するなら、自分の畑に連れて行って取れたての野菜を食べさせるのも良いかもしれない。 きちんと、言って聞かせれば大丈夫だろう。 しかし翌日も、その翌日もゆっくり達は部屋から出てこなかった。 食事はきちんと与えているので、共食いの心配はない。 寧ろ最近は、食事の量を増やせといってきた。 快く応じる、どうせ野菜は一杯あるのだ。 ストーブも石油が切れないように心がける。 「おじさん! はやくいれてきてね!! ゆっくりできないよ!!」 「ゆっくりできないよ!」 お母さんゆっくりが偉そうに急かしてくるので急いで石油を入れる。 子供達が温まれないのを嘆いているのだ、無理に怒っても仕方が無い。 「ごめんね、遅れて。今火をつけるからね」 「おそいよ! もっとゆっくりはやくしてね!!!」 母親が強気に出ているのに気付いたのか、子供達も自分にタックルしてきた。 取り合えず、その場は謝って部屋を後にする。 一ヶ月と時間が過ぎて、綺麗な紅葉も地面に還ろうとしていた。 勿論、ずっと部屋に居るゆっくり達には、残念ながらその変化は感じられなかったようだ。 一緒に散歩に行こうと誘っても、ここでゆっくりしてるよと言って一緒にきてくれない。 母親に居たっては、途中で美味しいもの見つけてきてね、と言う始末だ。 しかし、初めに家でゆっくりしていいよ、と言ったのは自分なので悪くいう事は出来ないが、全く遠慮と言う言葉を知らないようだ。 それから更に一ヶ月あまり過ぎ、相変わらずゆっくり一家は離れに居座り続けた。 おそらく、ゆっくり達にとっては至宝の時間だったのだろうが、こちらもこの時期は色々と忙しい。 さすがに十数匹のゆっくりの面倒は見ることが出来ない。 残念だが巣に帰ってもらう事にするほか無いようだ。 「おじさんなにいってるの? ゆっくりたちのおうちはここだよ! はやくたべものもってきてね♪」 分かっていたことだが、ゆっくりの頭の中ではここが自分達の巣になっているらしい。 随分おめでたい頭をしてので、お母さんゆっくりにもう一度『お話を聞いて』貰ったら、今度は直ぐに嘘を認めた。 「ごめんなざい! ゆぐっりたべれだがらごごにいまじだ!」 誠心誠意謝ってくれた、あのゆっくりが自らの過ちを認めてくれたことは嬉しかった。 やはり話し合いと言うのは大事である、これはゆっくりにも共通しているようだ。 逆にこちらが恐縮してしまったので、離れる前に最後の食事として沢山のわたあめを持たせてあげた。 大きな袋に入れたので持てるかどうか不安だったが、子ゆっくりも全員きちんと口で挟んで運べるようで一安心。 「おじさん! こんなにありがとう!」 「おうちにかえってゆっくりたべるね!」 「さよなら!!」 「おじさんゆっくりしてね!!」 思い思いの言葉を話して別れを惜しむゆっくり達、全員が扉の前に集まったのを確認して扉を開けた。 ゆっくり出来たといっても狭い部屋だ、普段から広い外の世界を走り回っていたゆっくりは窮屈だったのだろう。 扉を開けたとたん勢いよく飛び出すゆっくり一家。 「ゆ! さむいよ」 「さむいよ! さっきまであったかかったのに!!」 「おじさん! へんだよ、きゅうにさむくなったよ!」 別に変な事は何もないんだけどなぁ。 「だって今は冬じゃぁないか。君達がこの部屋に住みだしたのは秋の初め頃だろ? 寒いだろうと思って今までストーブをつけていたのを忘れたのかい?」 ……どうやらそこまで馬鹿じゃないらしい。 俺が言ってから、少し時間がかかったが全員が理解したらしい。 おやおや、雪遊びでもしたいのかな? みんな元気よくガタガタとはしゃぎ回っている。 既に幻想郷は一面中銀世界だ、これだけ雪があればさぞかし楽しいだろう。 「それじゃあ、さよなら。気を付けて帰るんだよ」 楽しそうにしているゆっくり達家族の団欒に、踏み込むなんて無粋な真似はしないさ。 玄関の外まで案内したら、そう一声かけて門を閉じた。 ちょうどチラチラと雪も降り始めた、少し硬そうな雪なのであまり積もらないだろう。 目を閉じると、今までゆっくり達を過ごしていた日々が蘇った。 同時に何故一家を家に置いていたのかも思い出した。 参った、最近は忙しかったからすっかり失念していた。 イケナイ、イケナイ、善は急げだ。 幸い玄関先を確認すると一家はまだ近くにいたので、邪魔をしないように裏口から巣へ向かった。 ゆっくり一家の巣へまでは、これまで何度か足を運んでいるので簡単にたどり着いた。 さすがに冷えるのだろう、ゆっくり霊夢の巣の入り口には、以前来た時にはなかった大量の松葉と石で見事に塞がれていた。 時間が惜しいので乱暴に蹴り崩す、早くしないとゆっくり霊夢達が戻ってきてしまうかもしれない。 散らばったそれらを退かすと、中にはゆっくり団欒していた魔理沙一家。 皆一様に自分に視線を送っていた。 「おじさん、またきたの! ここはまりさたちのおうちなの! あとかられいむたちがうばおうとしたからおいかえしたの!!!」 またまた、お母さん魔理沙が突っかかってきた。 数匹の子魔理沙は随分と大人しいのだが、何時もこれが頑固に自分の家だと主張するので言い争いになっていた。 「もうすぐ霊夢たちが帰ってくるんだけど? やっぱりここを出て行かないのかい?」 「おじさんしつこいよ! ここh!」 時間が惜しい、やっぱり返事はいらないよ。 言葉の代わりに、お母さん魔理沙を外に引きずり出した。 「ゆゆ! おじさんなにするのゆっくりできないなら、すぐにゆっくりいりぐちをなおしてかえってね!!!」 「お菓子をくれようと思ったんだけど……」 「ゆっ! おかし! たべるたべる!! おじさんはやくちょうだい!!」 「わかったよ。おーい、君達にもあげるよ!」 「おじさん!! はやくちょうだい!!」 子供達を呼んでいる間中、お母さんゆっくりはずっとそんな事を言っている。 「わかったよ、口を大きく開けてね」 余りにも煩いので、先にお菓子をあげる事にした。 「!!!???」 涎を流しながら大きく開けている口へ勢いよく押し込める。 とても美味しかったのか、楽しく跳ね回っている親は放っておいて、子供達にもキンキンに冷えたアイスキャンディーを数本、口に押し込んだ。 やはり、親と同様に元気一杯跳ね回る。 ほのぼのとした雰囲気だったが、時間が迫っているのを思い出し、約束通り一家には他所へ移ってもらう事にする。 霊夢達に返してもらうよ、と一声かけて次々と裏側の崖へ落としていく。 この深い谷の下なら、洞窟も沢山あるし雪が入り口を塞いでくれるから、中はとっても暖かくなっているだろう。 別に子ゆっくりはここに残しても大丈夫そうだったが、以前よんだSF超大作にこんな台詞があった。 「間違った指導者を選んだ者の末路だ」 そういうことなので一家全員で、新しい家を探してもらうことにした。 食べ物も与えたし、巣を探しているくらいの間は大丈夫だろう。 あぁ、そういえば霊夢達もストーブの効いた部屋で美味しそうに食べていたなぁ。 ゆっくり達にとっては、冬場の方がアイスを美味しく感じるのだろうか? 夏場にあげた事はないからなんとも言えないが。 等と考えている間に、辺りは薄暗くなってきた。 それにしたがって辺りから物音が消えていく、無音の中で深々と雪が降っているだけだ。 急いで散らかしてしまった石や松葉をかき集める、これは霊夢たちが使っていたのかもしれないから。 しかし、中の食べ物は魔理沙達のものだろう。 さすがのゆっくりと言えども、家をのっとったモノの食べ物は食べたくないだろう。 仕方がないので、全て俺が持って帰ってあげることにした。 ヤギの餌くらいにはなるから。 黙々と袋に詰めていると、日は更に傾いていた。 同時に訪れる、普通の黄昏時とは違う恐怖心。 これ以上ここにいるとこちらの身も危ない、なによりゆっくり達とかち合ったら折角の親子水入らずの邪魔をしてしまう。 手早く荷物をまとめて家路を急いだ。 門の前に着くと、既にそこにはゆっくりの姿はなかった。 巣に戻ったのだろう。 空き巣を心配して裏口を確認するが異常は無いようだ、きちんと鍵をかけていたので当たり前と言えば当たり前なのだが。 その後、食事をして風呂に入り、この記録を書いている。 この二ヶ月間、ゆっくり達を観察して分かった事は以上の通りだ。 明日からは、町外れの木の室に住んでいるゆっくりパチェリーについて観察してみようと思う。 仲良しの霊夢種と魔理沙種と共に越冬しているかもしれないが、それはそれで貴重な記録が取れるかもしれない。 三匹くらいなら十分に面倒を見ることも出来る。 なにより、一人には広すぎる我が家が賑わうのは喜ばしいことだ。 あまり役には立ちそうもないが、ゆっくりを愛する人がこの記録を読んでくれることを切に願う。 想幻210年12月31日 パタン。 今読んでいた本を一旦閉じで目線を上げる。 その先には、紅茶とお菓子をお盆に載せた赤髪が綺麗な司書。 「小悪魔ご苦労様。取り合えず休憩にするから、紅茶をもう一つ持ってきてくれる?」 「??」 対する司書―小悪魔はキョトンとしている。 もうボケたのか? また唐辛子が入ってると思っているのか? いやいや、今日は入れていない 二個いっぺんに飲み干す魔法でもあるのだろうか?。 「あなたも一緒に飲みましょう?」 合点がいった、要するに一緒に飲んだくれよう、と言うわけだ。 「今度は何を読んでいるんですか?」 自分用の特上の紅茶を入れて戻ってきた小悪魔が尋ねる。 パチュリーが自身で手に入れてきた本なので、まだ内容は知らないのだ。 「ゆっくりを可愛がっていた男が残した飼育データよ」 紅茶の違いに気付き、手を伸ばしながら答えるパチェリー。 「そんな本だったんですか? それを持ってくるの苦労したんですよ。パチュリー様と違って、力のない私は水の流れを変えるのだって大変なんですから」 それよりも早くカップを口に運びながら答える小悪魔。 「濡れるのはあなた一人で十分よ。それにこれ面白いのよ、あなたにも後で読ませてあげるわ」 「はぁ。……おかわりをお持ちしますね」 本気でサマーレッドを撃とうとしている事に気付き、急いで特上の葉で唐辛子入り紅茶を作りにいく小悪魔が答える。 外に出歩かず、ゆっくりを見たことがなかった二人は、アレ以来ゆっくりをいじめる事がブームになっていた。 「本当に興味深いわよ。この資料」 男の願いが叶い、その資料はとてもゆっくりを愛している魔女の大図書館に、大切に保管させるだろう。 おまけ編